海洋深層水研究
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サガラメEisenia nipponica幼胞子体の硝酸態窒素吸収特性
二村 和視清水 一輝野田 浩之岡本 一利
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2023 年 23 巻 3 号 p. 89-94

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抄録
静岡県では,静岡県焼津市地先から駿河湾深層水を取水しており,この深層水には海藻類の成長の制限要因となる硝酸態窒素が豊富に含まれている.本研究では,サガラメEisenia nipponica胞子葉の硝酸態窒素吸収速度に対する硝酸態窒素濃度,光量子束密度および水温の影響を調べた.硝酸態窒素吸収速度はMichaelis‒Mentenの式に当てはまり,最大吸収速度(Vmax)と半飽和濃度(Ks)はそれぞれ0.024 μmol cm-2 h-1と11.3 μmol L-1であった.硝酸態窒素吸収速度と光量子束密度の関係は指数関数で表され,最大吸収速度は光量子束密度400 μmol m-2 s-1で0.033 μmol cm-2 h-1,暗黒条件では硝酸態窒素を吸収しなかった.また,水温と硝酸態窒素吸収速度との関係は二次関数で表され,13.5℃で最大吸収速度を示した.駿河湾深層水の硝酸態窒素濃度は年間を通して20 μmol L-1 以上で,サガラメ幼胞子体の高い栄養要求を満たすと考えられた.
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© 2023 海洋深層水利用学会
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