2001 年 2 巻 1 号 p. 15-21
海洋深層水は現在多くの分野で活用が進められているが, 医療分野においてはアトピー性皮膚炎の海水浴療法の改善法として治療に用いられている.アトピー性皮膚炎は多種類の免疫系細胞がその発症に関与している.患者は血液中の抗体 (IgE) の濃度や炎症に関わる細胞種の違いから, IgE値の高いTh 2 (液性免疫) 優性型とIgE低値のTh 1 (細胞性免疫) 優性型に分類されている.本論文では海水中のマクロファージ活性化物質を解析し, その有力な1因子としてエンドトキシンを同定したので報告する.
海水中のマクロファージ活性化物質は本研究で表層より深層水の中に多く存在していることが明らかとなった.治療例から, 患部の免疫担当細胞がエンドトキシンにより活性化され, Th 2優性型からTh 1優性型にThバランスが変化することにより, Th 2優性型のアトピー性皮膚炎患者においては症状の改善がみられ, Th 1優性型の患者においては悪化すると推定される.