静岡県は, 駿河湾における海洋深層水の有効利用事業として2000年8月に取水管の敷設を行い, 焼津沖の石花海 (せのうみ) 海盆における深度397mおよび深度687mに海洋深層水取水口を設置した.海洋科学技術センターは当事業計画の効率的な推進に資するため, 取水管工事着工以前の1999年11月8日から約3ヵ月間, 焼津沖の深層水取水予定海域において, 流動特性を把握する調査を実施した.
調査結果として, 多層深度で得られた流速等の解析から, 半日周期および1日周期の潮汐変動の他に, 数日~10日程度の周期的な流動変動が存在し, これらの変動が数百メートルの深部にまで及ぶことが分かった.また, 各流速成分の鉛直分布から, 約250m以浅の表層では南西向きの流れが, それ以深では北向きの弱い逆流が存在し, さらに絶対流速に対する時間平均値および標準偏差の鉛直分布から, 700mを超す深部でも予想以上に大きな周期的流動変動が存在することが示唆された.