抄録
富山湾では深海産の有用魚種ハタハタの資源が激減しているため, 著者らは, 海洋深層水を用い, 人工種苗の大量放流を想定した親魚養成を試みてきた.前報で報告したように, 1歳魚の養成と採卵は既に成功しているので, 今回は受精卵の大量確保を目的として, 2歳魚の養成 (200尾) と1歳魚の大量養成 (3, 250尾) を行った結果, いずれの親魚も成熟した.産卵は2ヵ月以上に及んだが, 水温制御 (4~12℃ の段階的昇温) によってふ化の同調を行い, 70%以上のふ化を12月末の1週間に集中させ, 通常よりも2ヵ月早く種苗生産を始めることができた.ふ化仔魚を水槽と網生簀で育成した結果, 5月には通常より全長で30mm大きい稚魚が得られたが, 生残率は48%と低かった.今回の試験では, 産卵期間の長期化, 産卵魚の割合, 卵の発眼率とふ化率, ふ化仔魚の活力などに問題があり, 餌料, 日長, 水温, 飼育密度および産卵基盤の観点から考察を試みた.