抄録
海洋深層水の栄養塩類濃度の変動の要因を解明するために, その硝酸塩濃度の連続測定を実施した.富山県滑川市及び入善町の施設へ揚水されている海洋深層水について, 2003年1月から2004年12月まで, 硝酸塩濃度を1時間毎に計測した.滑川海洋深層水の硝酸塩濃度は通常は23~24μMで推移し, 時々8.8~25.0μMの濃度変動が観察された.一方, 入善海洋深層水の硝酸塩濃度は24~25μMで推移し, 17.6~25.4μMの濃度変動がみられた.前回の滑川での調査で既に報告した現象であるが, 濃度変動は時間単位でみられ, 数時間から数日に及ぶこと, 硝酸塩の濃度減少と水温の上昇が対応することは入善での調査でも確認された.滑川と入善における硝酸塩濃度の変動を比較すると, 入善での硝酸塩濃度が僅かに高いが, 濃度変動の幅は明らかに小さいこと, 入善での濃度減少は数時間遅れで発生する頻度が高いことが判明した.これらの現象は, 富山湾における硝酸塩濃度と水温の深度分布の測定結果から, 硝酸塩濃度が低く水温の高い水塊が両深層水取水口付近へ移動・降下すること, その降下距離は150mに及ぶこと, 入善での硝酸塩の濃度変動が小さいのは取水口深度が深いことに起因することが推定された.