21世紀東アジア社会学
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特別寄稿
サイボーグ人類学
デジタル時代におけるサイバネティックな有機体の隠喩と知識生産
阮 雲星高 英策陳 亦欣
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2021 年 2021 巻 11 号 p. 1-19

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抄録

  本論文では、サイボーグの概念を分析することによって、中国文化人類学におけるネットワーク人類学のアプローチとは異なり、主に情報社会における人間の存在論的な再構成にかかわるパラダイムシフトに焦点を当てた人類学的研究を提起する。「サイボーグ(cyborg,cybernetic organism)」は「サイバネティックな有機体(オーガニズム)」と意訳され、当初は宇宙飛行士の宇宙生存問題に提起された生命工学的な概念だったが、その後に転用されて、一つの存在論的隠喩(メタファー)になった。原理上、サイボーグは人間と機械の二項対立の境界線を曖昧にし、人間の主体性の省察にみる根本的な論理を、サイバネティクスが人間を情報ネットワークのノードまたは情報の受信および処理端末として理解することにみる。表現上、サイボーグは、可視化された一般的な空間において、人と物を組み立て接合することによって形成される、オープンノードおよび相互接続的なネットワークを示している。サイボーグ的なメタファーの影響範囲は知識生産にも及ぶようになり、その領域の理論が劇的に変化している。本稿では現代中国の知識生産論的な文脈での世界視野的なサイボーグ人類学をテーマに取り上げ、現代のサイボーグ人類学のパラダイムシフトを象徴する、人間と(機械)の融合体の存在論を試論し、新たな知識論・方法論の探求を試みる。そして、高度情報化時代にて自覚的にパラダイムシフトを試みる民族誌的研究の展望を述べる。

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© 2021 日中社会学会
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