Edaphologia
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トビムシの高次分類体系における近年の動向
一澤  圭
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2020 年 108 巻 p. 1-22

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抄録
トビムシの高次分類体系について,20 世紀以降に提唱されたおもな体系を通覧するとともに, 近年の分子系統 解析等の研究事例を比較した.Börner (1913) はトビムシの外見的特徴によりArthropleona とSymphypleona sensu Börner (1913) の2 グループに大別し,前者の下位分類群としてPoduromorpha およびEntomobryomorpha を, 後者の下位分類群としてNeelidae(= Neelipleona) およびSminthuridae sensu Börner (1913)(= Symphypleona sensu Massoud, 1971)をそれぞれ配置する体系を示した.20 世紀後半には, 神経内分泌系や表皮の微細構造, 消化管の形状といったより詳細な形質が議論されるようになり,Börner (1913) の体系に様々な改変が提案された.結果として21 世紀初頭における主要なトビムシ関連文献では,次の3 パターンの高次分類体系が見られる:(I) Poduromorpha,Entomobryomorpha,Symphypleona sensu Börner (1913) の3 グループ;(II) Arthropleona,Symphypleona sensu Massoud (1971),Neelipleona の3 グループ;(III) Poduromorpha,Entomobryomorpha,Symphypleona sensu Massoud (1971),Neelipleona の4 グループ. 近年の分子系統解析を用いた研究事例では,Poduromorpha およびNeelipleona の単系統性を支持するが, それらと他のグループとの類縁関係は事例によって異なり,ArthropleonaやSymphypleona sensu Börner (1913) の単系統性は必ずしも支持されない. そのため現時点では上記 (III) の体系,つまり4 グループに大別する体系が最も妥当と言える.ただしこれら4 グループ間の類縁関係について統一した見解が得られていないことに加え,Entomobryomorpha 自体の単系統性についても疑問が示されており,トビムシの高次分類体系については今後さらなる修正が加えられることが予想される. 最後に, 近年大きな改変が提案されたOdontellidae の所属およびEntomobryoidea 内部の構成について諸説を説明した.
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© 2020 日本土壌動物学会
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