抄録
毎年繁殖のために西南日本に渡来し,ミミズを主な餌として雛を育てるヤイロチョウの営巣場所選択の主要因を明らかにするために,高知県の暖帯林において,林相と地形の異なる多数の林分で地表に生息するミミズの個体数,現存量を調査した.全体を通じて採集されたミミズは8種1164個体であった.地形は表層性ミミズ群集の密度と現存量の有意な変動要因であり,谷沿いの凹地形の群集が最も豊かであった.ヒノキ人工林はスギ人工林や常緑広葉樹林に比べて種数と種多様度が低い傾向を示した.林相と地形の組み合わせにより分類された8つの生息場所タイプは,ミミズの密度,現存量,種数,種多様度を変数として4つのクラスターにまとめられた.常緑広葉樹林×谷沿い×凹地は1生息場所タイプのみで1クラスターを構成し,表層性ミミズ群集の量と質が最も豊かであった.本研究や既存の報告からヤイロチョウの主な営巣場所は常緑広葉樹林の沢沿いと考えられ,両者の一致から,餌資源の豊かさはヤイロチョウの営巣場所選択の重要な要因の一つであると結論した.