西表島の亜熱帯照葉樹林におけるリター性大型土壌動物の群集構造,および,それらが落葉分解に及ぼす影響を明らかにするため,西表島の原生林(Aira I)および二次林(Aira II,Station)において以下の3つを調べた:(1)大型土壌動物の群集構造,および,その季節変化,(2)リターフォール量と林床有機物量に基づく有機物の分解速度(K),(3)リターバック法による大型土壌動物排除が落葉分解に及ぼす影響.調査期間内に採取されたリター性大型土壌動物の全個体数は17,577個体で,アリ科が最も多く,次いで,コウチュウ目・成虫,ワラジムシ目の順であった.一方,バイオマスはワラジムシ目が最も大きく,ミミズ目,マキガイ綱の順であった.ほとんどの動物群においては明瞭な季節変化はみられなかったが,チョウ目・幼虫のバイオマスは3地点ともに冬に増加する傾向が認められた.また,調査地間で比較すると,個体数はAira IとStationではあまり差がなく,Aira IIがそれらの半数程度であったのに対し,バイオマスはAira IがStationとAira IIの約2倍であった.リターフォール量はStationが最も多く,次いで,Aira Iで,Aira IIが最も少なかった.一方,林床有機物量はAira Iが最も少なく,他2地点の約2/3程度であった.これらの値を基に算出した有機物の分解速度(K)は,Aira I>Station>Aira IIの順であり,この傾向は動物バイオマスの順(Aira I>Station≥Aira II)と類似していた.また,リターバック法を用いて土壌動物排除が落葉分解に及ぼす影響を調べた結果,全ての調査地において,土壌動物の排除が落葉の分解速度を有意に減少させた.さらに,この過程は調査地間において有意に異なっていた.加えて,土壌動物の落葉分解における貢献度が調査地間で異なることが示唆された.これらの結果から,本地域においては,リター性大型土壌動物が落葉分解に影響を及ぼしていると考えられた.