Edaphologia
Online ISSN : 2189-8499
Print ISSN : 0389-1445
ISSN-L : 0389-1445
キシャヤスデ発生後の森林土壌における団粒構造の崩壊過程
山口 久美子小池 文人金子 信博
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 88 巻 p. 11-18

詳細
抄録

キシャヤスデは日本中部山岳地域に8年周期で同齢個体群が発生することが知られる.本研究では,キシャヤスデの成虫発生後の森林土壌において,マクロ団粒構造の大きな変動を観測した.ヤスデの生息密度が異なった2地点において,1993-2001年にかけて成長するヤスデ個体群の死亡後,2001-2004年にかけて,土壌深度0-20cmを4層に分けて採取し湿式団粒分析を行った.マクロ団粒(>2mm)の割合は,高密度区のほうが低密度区よりも高く,キシャヤスデ個体群の死亡後のマクロ団粒の量の変化は,高密度区のほうが低密度区よりも大きかった.団粒量の変化速度と団粒径との関係は,キシャヤスデ低密度区では有意な傾向は見られなかったが,キシャヤスデ高密度区では時間とともに大きな団粒が減少し,小さな団粒が増加していく傾向が見られ,その境界の団粒サイズは粒径測定階級ごとの計算では2mm,回帰直線からの計算では3.5mmであった.指数関数的な崩壊を仮定した,キシャヤスデ高密度区の粒径4.75mmを超える団粒の平均滞留時間は3.2年であった.これらの結果から,キシャヤスデは一時的に森林土壌の粗大マクロ団粒(>2mm)を増加させ,その後に年単位の時間スケールで粗大マクロ団粒(>2mm)が崩壊し,小マクロ団粒(0.25-0.5mm,0.5-2mm)とミクロ団粒(0-0.25mm)が増加すると考えられた.

著者関連情報
© 2011 日本土壌動物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top