教育社会学研究
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論稿
専門職の「量」をめぐる政策過程
――薬学部はいかにして量的に抑制されるに至ったか?――
速水 幹也
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2024 年 115 巻 p. 5-25

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抄録

 本研究は,薬剤師養成課程である6年制課程薬学部の学部新設・定員抑制政策について,医学部や歯学部などの先行事例がある中で,なぜ薬学部では決定までに20年以上を要したかに焦点化し,行政文書と専門職団体の年誌や活動報告等の文書を用いて明らかにした。
 本研究の社会学的関心は,専門職養成における「量」(養成数)と「質」(資質・能力)がトレードオフの関係として想定される中で,「量」に直結する薬学部の入学定員が抑制されなかった理由を探ることにある。2000年代以降,規制緩和が日本政府全体の基調となる中で,薬学部は私学を中心に量的拡大を続けてきた。一方,量的拡大による薬剤師の質的低下を危惧した専門職団体は,需給均衡の維持を理由として医学部等と同様に薬学部も定員抑制するよう主張し,せめぎあいが生じていた。
 分析の結果,文部科学省・厚生労働省は規制緩和基調の中での定員抑制には明確な根拠が必要となることを一貫して主張したのに対し,専門職団体は定員抑制の必要性を主張するものの,政策検討段階では極めて消極的な姿勢をとり,文科省・厚労省の提案に受動的であった。結局,定員抑制を実現したのは文科省・厚労省が当初から主張した需給調査結果等の根拠が揃ったからであり,主導したのは他ならぬ文科省・厚労省だった。このことは専門職養成の「量」的制御に対して,専門職団体は専門職論で示されるほどの関心,あるいは戦略がない可能性を示唆している。

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