教育社会学研究
Online ISSN : 2185-0186
Print ISSN : 0387-3145
ISSN-L : 0387-3145
最新号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
論稿
  • 非営利学習支援団体からみえる子どもの貧困対策の限界
    成澤 雅寛
    2018 年 103 巻 p. 5-24
    発行日: 2018/11/30
    公開日: 2020/06/26
    ジャーナル フリー

     従来の教育社会学的研究は,子どもの貧困に関して不利伝達のメカニズムやその実態を明らかにしてきた一方で,貧困対策としての支援が盛り上がる中で社会学的に考察することが重要となってきているにもかかわらず,そのような支援を行っている団体について検討してこなかった。貧困の連鎖を防止するための施策として打ち出されている学習支援事業を対象にし,貧困の対策という側面を検討することが,貧困の再生産メカニズムを検討するうえでも重要である。
     そこで本稿は,貧困対策として教育活動を行う非営利の学習支援団体を対象として,その意義と支援の限界を明らかにすることを目的とした。本稿ではこれまで支援上の困難が指摘されてきた学習支援と居場所づくりの相互関連に着目しながら,教育支援研究において指摘されてきた各支援団体特有の排除という視点から分析を試みた。
     その結果,貧困対策としての学習支援は,多様な貧困層の進学を可能とする点で意義があり,さらに「居場所づくり」を行うことによってより多様な層の包摂を可能としていたが,「居場所づくり」を行うほど「学習支援」という目的を果たせなくなり,その一方で「学習支援」に特化すると学習不適応層を排除せざるを得なくなっていた。
     最後にこのような貧困対策としての学習支援の限界について考察,本稿の結果から得られる示唆と残された課題について検討した。

  • バンドマンの「将来の夢」をめぐる解釈実践とその論理
    野村 駿
    2018 年 103 巻 p. 25-45
    発行日: 2018/11/30
    公開日: 2020/06/26
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は,「音楽で成功する」といった夢を掲げ,その実現に向けて活動するロック系バンドのミュージシャン(以下,バンドマン)を事例に,夢の実現可能性に関する解釈実践の内実を検討し,若者が夢を追い続ける社会的背景を明らかにすることである。バンドマンを対象とした質的調査の結果に基づき,次の4点を明らかにした。
     第1に,夢の実現可能性に関するバンドマンの語りの特徴として,可能性と限界という2つの認識が内包されていることを示した。そして,なぜ夢の実現可能性に限界を感じながら,夢を追い続けることができるのかを検討した。
     その結果,第2に,「夢の実現には時間がかかる」という認識枠組みが獲得されることによって,また第3に,周囲のバンド仲間の状況を選択的に参照する行為によって,夢を実現できていない自己の正当化と将来における夢の実現期待が同時に達成されることで,夢を追い続けることが可能になっていると指摘した。加えて,第4に,夢の実現可能性を低く見積もる因習的見解からの作用が,バンドマンの夢追いアスピレーションを加熱させることで,夢追いの継続という意図せざる帰結を導いてしまうことを明らかにした。
     以上の知見をもとに,先行研究で論じられてきた進路選択・進路指導の実践を再考し,教育社会学においても積極的に学校外部へと視野を広げて,子ども・若者の進路選択プロセスを検討する必要があると論じた。

  • 上層ホワイトカラー入職に対する学歴効果の変容
    豊永 耕平
    2018 年 103 巻 p. 47-68
    発行日: 2018/11/30
    公開日: 2020/06/26
    ジャーナル フリー

     本稿では,大卒労働者が従事することが期待されてきた上層ホワイトカラー階層への入職に学歴が与える影響が,1990年代以降の高学歴化・経済変動によって変化したのかどうかを検証した。①初職での専門職入職と,②世代内移動による管理職入職の2つの入職経路に分けた分析から,男性は高学歴化が進んだ1995年以降,女性は第2次男女雇用機会均等法が施行された1999年以降の変化を議論した。
     社会階層と社会移動全国調査(SSM調査)の1995年・2005年・2015年調査の合併データによる分析の結果,以下の3点が示された。第一に,大卒労働者が増加した1995年以降にも依然として高等教育学歴は専門職入職と強く結びついていた。入試選抜度の低い私立大学出身男性で専門職になりにくくなる不利が増大しているわけではなく,むしろ入試選抜度の高い私立大学出身男性ではさらに専門職になりやすくなっていた。第二に,1995年以降には大卒男性では管理職入職が困難化していた。特に入試選抜度の低い私立大学出身男性ほど管理職になりにくくなる不利が増大しており,学歴インフレは専門職入職ではなく管理職入職では生じていることが示唆された。第三に,女性については第2 次均等法が施行された1999年以降に学歴間格差が拡大していた。1999年以降の変化は大卒女性ほど大きく,大卒女性,特に入試選抜度の高い大学出身女性が管理職になりやすくなっていた。

  • 流動的な語りから語りの一元化へ
    梅田 崇広
    2018 年 103 巻 p. 69-88
    発行日: 2018/11/30
    公開日: 2020/06/26
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は,生徒間の人間関係のトラブルの構築過程を,トラブルをめぐる立場の流動性との関連から明らかにすることである。この作業から,トラブルの延長線上に位置づく〈いじめ〉をめぐる立場の流動性という見方が孕む問題性について検討する。
     1980年代以降本格化したいじめ研究の中でも,「いじめ問題」の構築主義的な研究は,〈いじめ〉というカテゴリーが付与された事後の事件に対する社会的な言説や,教師の語り等について検討してきた。その一方で,〈いじめ〉というカテゴリーが付与される以前の当事者らの解釈プロセスは看過されてきた。そのため,本稿では〈いじめ〉というカテゴリーが付与されるまでの生徒間トラブルに焦点を当て,生徒間トラブルを当事者や第三者らによる解釈の抗争プロセスとして捉え直した。
     分析結果は次の通りである。まず,本稿の事例では,トラブルの〈被害者〉が次々に入れ替わり,最終的には〈被害者〉と〈加害者〉の立場が逆転してしまう現象が浮かびあがってきた。一方,そのトラブルの解釈共同体においては,立場が流動的であるどころか,〈加害者〉が一貫して〈加害者〉としてカテゴリー化され,トラブルの解釈共同体から排除されうる可能性が示唆された。
     以上の結果から,本稿では物語の多声性と立場の流動性という見方が孕む死角について指摘し,生徒間トラブルをめぐる物語の多声性,重層性を視野に入れた研究の必要性を指摘した。

  • 水野 進
    2018 年 103 巻 p. 89-108
    発行日: 2018/11/30
    公開日: 2020/06/26
    ジャーナル フリー

     本稿は,文科省による検定の正統性確保メカニズムの展開とそこから産出される歴史教科書知識の性格に関し,B・バーンスティンの〈教育〉装置論とM・アップルの「妥協した知識」という概念を手がかりに考察したものである。その結果以下のことが明らかになった。①文科省は,政治社会的,学説的な背景要因のもと検定の正統性を確保するためにその透明性の向上,公正・中立性確保を至上命題としたが,そのことが逆に「複数の視線」による検定過程の環視を可能にさせ,その結果文科省は従来よりも強い修正意見を出しにくい状況を自ら作り出したこと,その際それを補完するものとして教科書会社の検定・採択通過のためのリスク管理が重要な役割を果たし上記の正統性確保に寄与していること,②2014年以降,一方で検定基準見直しで歴史教科書知識は検定の許容範囲を広げ,通説やそれ以外の事象に関する政府見解や最高裁判例などからなる確定的知識の領域と教科書に関わる諸勢力によって生成された「妥協した知識」等からなる未確定な知識の領域とに分かれ多様化したこと,また一部の事象では非記述という教科書会社の対応も招来させたこと,他方で検定審査要項見直しで執筆者・教科書会社の自己規制さらには教科書の多様性の減少へと繋がる可能性が生じたこと,以上である。

研究レビュー
書評
feedback
Top