教育社会学研究
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論稿
  • ―シンボリック・バウンダリーの視点から―
    太田 知彩
    2023 年113 巻 p. 5-26
    発行日: 2023/12/20
    公開日: 2025/05/27
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,シンボリック・バウンダリーの視点から,「グローバル人材」が自身や集団をどのように定義・認識し,集団としてのメンバーシップをいかなる基準で設定しているのかを明らかにすることである。
     先行研究では「グローバル人材」の定義や要件をめぐって,留学経験や語学力といった「客観的」な側面から多くの批判が寄せられてきた。しかし,「グローバル人材」の当事者が「グローバル人材とは誰か」という問いをいかに捉えているのかという「主観的」な側面については明らかにされてこなかった。
     そこで,本研究では44名の「グローバル人材」へのインタビュー調査によって,以下の四点を明らかにした。第一に,「グローバル人材」は「普通の大学生」や「エリート」との間に「やりたいこと」というバウンダリーを形成している。第二に,「グローバル人材」内部では「やりたいこと」というバウンダリーによって序列が形成されている。第三に,「やりたいこと」は「正統から外れる」ものであることが望ましく,「交換留学」や「標準的なルート」は評価されない。また,それは「社会貢献」との接続が理想視されている。第四に,こうした条件を満たせるかどうかには,家庭環境やジェンダーが関わっている。
     以上から,「グローバル人材」はこうしたシンボリック・バウンダリーを形成することで,集団の外部との間に,また,集団の内部においても差異を生み出していることを指摘した。

  • ―明治後期小学校の成績不振児をめぐる議論の検討を通して―
    井出 大輝
    2023 年113 巻 p. 27-48
    発行日: 2023/12/20
    公開日: 2025/05/27
    ジャーナル フリー

     本論文は,カイ・T・エリクソン(1966=2014)の議論を手がかりに,明治後 期における学業成績不振児:「劣等児」の議論を分析し,学業成績不振が,学校で逸脱行動とみなされるようになった際,教員らの児童に対する認識や処遇がどう変化したのかを明らかにするものである。背景には,明治33年の第三次小学校令で進級試験が廃止され,同学年の児童間に学力差が生じるようになったことで,新たな児童集団で教授活動を行っていくための,新たな認識や処遇が必要となったことがある。
     知見として,次の認識や処遇が形成されたことで,特別に処遇すべき逸脱児童としての「劣等児」が成立したと分かった。①児童は学級での教授活動を妨げてはならないという認識,②問題解決には家庭の協力的な態度をも要請されるという認識,③教員は児童が成績不振で授業を妨げる状況を放置してはならず,その事情を考慮して同情的に処遇すべきという認識,④成績不振そのものよりも,特定の児童が授業の妨げとなる状況を解消するための処遇,⑤そうした処遇をしても授業の妨げになる者に退学を促し,学校に在籍する児童の境界を明確にする処遇である。
     つまり,政策,認識,処遇の変化に伴って,学業成績不振を,問題化と特別な処遇の対象とすることが可能となり,「劣等児」は成立したと言える。また「劣等児」は,新たな児童集団に混乱をもたらしたのではなく,集団の規範や秩序を形成する存在として現れたのである。

  • ―幼稚園の製作場面で用いられる否定誘発質問に着目して―
    粕谷 圭佑
    2023 年113 巻 p. 49-69
    発行日: 2023/12/20
    公開日: 2025/05/27
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は,一斉指導における教示理解のありようを,幼稚園でしばしば観察される園児に否定をさせる質問(否定誘発質問)の用いられ方を明らかにすることを通して検討することである。
     一斉指導において,教え手には,いま行っている教示を学び手が正しく理解し ているかどうかを把握する必要が生じる。このような「教示理解の確認」として,「教師の側があえて間違える」ことを通して,学び手が「わかっているかどうか」を確認する方法が知られている。本稿はこうした実践知に相当する質問形式として否定誘発質問に着目し,その幼稚園年少級の製作場面での用いられ方を分析した。
     分析知見は次の三点である。第一に,否定誘発質問は,事前の教示との差異が可視化された状態が示されることで,否定の応答を促すものになっている。正しい状態からの差異を主張する発話はそれ自体で一定の教示理解を示すものであるうえ,否定の応答から教示の核心部分を更に問うことも可能となる。第二に,否定誘発質問による教示理解の確認は,教示される知識の伝達を公然化し,個々の園児の理解ではなく,園児集団の理解の確認が行われる。第三に,否定誘発質問は,教示理解の確認だけでなく,教示活動への園児の参与の促しとしても用いうる。これらを踏まえ,否定誘発質問を用いた教示理解の確認が,幼稚園年少級の教育場面という活動の文脈における合理性と幼児の社会化における意義を持つことを論じた。

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