2016 年 11 巻 2 号 p. 401-414
本研究ではドイツ・ニーダーザクセン州ギムナジウムを事例に,ESD(持続可能な開発のための教育)の視点を入れた地理カリキュラムおよび学習の構造ならびに特質を明らかにするために,同州中等地理カリキュラム『コアカリキュラム』ならびに教科書TERRA Erdkundeを分析した.分析結果から,カリキュラムならびに教科書の特質として,学習プロセスに対応して持続可能性および持続可能な開発を反復して学ぶ構造となっていることと,持続可能性および持続可能な開発のもつ価値観を,所与のものとして学習を展開しない構造が明らかとなった.この分析により,日本の地理教育におけるESDの学習にとって,多様な学習プロセスを通じて,ESDの学習を繰り返し学ぶ地理カリキュラム作成,および持続可能な開発の起源あるいは概念を学ぶ機会を設定する必要があることを指摘した.