食の地理学に関わる近年の英語圏の研究動向を展望した.Iでは近年の英語圏における食の地理学への関心の高まりを紹介するとともに用語の整理を行い,IIでは食の地理学の射程として,2冊の教科書の構成から問題を俯瞰し,フードセキュリティ/(フード)インセキュリティという構図を示した.また,その構図の中で様々な空間スケールに配置される食にかかる諸問題をキーワードとして抽出した.IIIでは,それらを理解するための空間スケールの準拠枠としてBell and Valentine(1997)を示すとともに,抽出された食に関わる諸問題を上記の空間スケールと交差して議論するフードスケープというアプローチを紹介した.これが本論文で取り上げる新たな視点である.IVではフードセキュリティ/インセキュリティの構図,およびその構図の中でグローバルスケール,国家スケール,あるいは都市スケールなど個別のスケールで発現する具体例を示すとともに,インセキュリティへの対抗概念としての食料主権等を検討した.