E-journal GEO
Online ISSN : 1880-8107
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調査報告
  • 成瀬 厚
    2022 年 17 巻 2 号 p. 180-196
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/01
    ジャーナル フリー

    本稿は,東京2020五輪大会で実施されたホストタウンについて,登録自治体にアンケートを行い,回答を分析することでその全体像を把握したものである.世界中から集まる出場選手のために事前合宿の場所を日本全国から募るホストタウン政策は,国際交流を行う目的も有する.アンケートで集まった226件の回答では,事業の主目的として6割が事前合宿を,4割が国際交流を,それぞれ志向する結果となった.事業計画では,トレーニングが7割,スポーツによる交流事業が7割,レセプション・パーティも6割で,それぞれ計画されていた.選手団の国内での移動費や宿泊費は自治体が賄い,事業に伴う施設整備を行わない自治体が半数を占め,職員の再配置や研修を行う自治体は多くなかった.ホストタウンは相手国・地域の受け入れ競技選手の出場が決定する時期と前後して計画され,選手が競技に集中すべきところで交流事業を行わなければならないといういくつかの矛盾も確認できた.

  • 山本 涼子, 埴淵 知哉, 山内 昌和
    2022 年 17 巻 2 号 p. 197-209
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/09
    ジャーナル フリー

    本研究では,近年の国勢調査の回答状況における地域差とその推移を俯瞰する.具体的には,各種の回答率と都市化度との関連を都道府県単位で分析した.その結果,(1)聞き取り率は2005年以降上昇しつつ地域差も拡大してきた一方,2020年調査(推計値)では都市–農村間の地域差は維持ないしは縮小する可能性があること,(2)コロナ禍によって減少した調査員回収はインターネット回答よりも郵送回答によって代替されており,農村部でその影響が相対的に大きかったこと,(3)外国人の不詳率は概して日本人よりも高い水準にあり,地域差も大きく拡大傾向にあることが示された.ここから,回答状況とその地域差の水準は指標や調査年,国籍(日本人/外国人)によって異なる一方,都市–農村間の地域差そのものは一貫してみられることも示された.これらがもたらす疑似的な地域差の影響に留意しつつ,国勢調査のデータを実証研究に活用していくことが期待される.

  • 中澤 高志
    2022 年 17 巻 2 号 p. 210-229
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    本稿では,テレワーク人口実態調査から得られる年齢階級別・職業別の雇用型テレワーカー率を,国勢調査から得られる年齢階級別・職業別雇用者数に乗じることにより,市区町村別のテレワーカー率を推計した.雇用型テレワーカー率の推計値は,都市において高く農村において低いことに加え,雇用型テレワーカー率の低い現業に従事する雇用者の割合が東高西低であることと逆相関の関係にあり,東日本で低く西日本で高い傾向がある.サービスは雇用型テレワーカー率が低い職業であるが,地域全体の雇用型テレワーカー率の高低に関わらず,偏在する傾向がある.本稿は,相対的に高所得かつテレワーカー率の高い雇用機会が地理的に偏在することだけではなく,テレワークが可能な職に就く人の生活が,同じ地域に住み,テレワークへの代替が困難な相対的に低所得の人々の仕事に支えられているという,地域内格差の可能性にも目を向けるべきであることを示唆する.

  • 三木 理史
    2022 年 17 巻 2 号 p. 230-248
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/28
    ジャーナル フリー

    自然災害に比較して地理的基底要因への注目の少ない重大鉄道事故について,1971年近畿日本鉄道大阪線での正面衝突事故を例として5つの論点から分析した.その結果,事故現場がトンネル掘削技術と経費削減のため山間急勾配を受容して建設されたこと,勾配区間に上り列車優先で垣内信号所を特設したこと,同所の保安設備が下り列車に対して貧弱であったことが明らかになった.そして事故区間は,当該線開通が周辺村落の寒村化を促して非常時の連絡手段に乏しく,また平時から集落と鉄道との稀薄な関係が救助活動の遅れを生んだことも解明できた.

  • 谷本 涼, 埴淵 知哉
    2022 年 17 巻 2 号 p. 249-264
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/06
    ジャーナル フリー

    個人の全体的な生活の質を考察するには,生活におけるさまざまな目的地の利便性を総体的にとらえられる認知的アクセシビリティの指標を用いた議論が必要である.都市政策における自動車依存からの脱却の方向性も踏まえ,本稿の目的は,もし自動車が使えなくても,日常生活で必要あるいは望む活動が十分にできるか否かというアクセシビリティの総体的感覚(Sense of Accessibility: SA)の指標と,客観的なウォーカビリティ指標(WI),および近隣環境・個人の属性との関係を考察することとした.順序ロジスティック回帰分析の結果,WIはほぼ一貫してSAと有意な正の相関を示した.WIの構成要素の中では,人口密度がSAと強い相関を示した.回答者の性別,年齢,世帯類型は,自動車利用頻度の高低でSAとの相関の正負や強さが大きく異なっていた.この結果は,昨今の都市政策の方向性をある程度支持する一方,自動車に依存しない生活への支援を要する個人の存在も示唆している.

  • 関戸 明子
    2022 年 17 巻 2 号 p. 265-285
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/06
    ジャーナル フリー

    本稿では,明治期の東京における温泉浴場について,公文書,新聞記事,案内書などの資料を精査して,施設の形成過程や分布の変遷を明らかにした.そして当時の社会的背景をふまえたうえで,温泉浴場という場所の意味について考察した.東京では1870年代前半に温泉を名乗る浴場が現れ,1870年代後半から「開化」を象徴するものとして流行した.それは人工的な温泉であり,薬湯,温泉地より原湯を運んだもの,湯の花を入れたものであった.風紀や衛生面で問題のあった浴場の改良も進んだ.1877年には44の浴場は市街地とその近隣に多く分布していた.1885年には178の浴場は市街地に集中的な立地がみられ,その外縁部への展開も認められた.1897年には,浴場が淘汰された結果,市街地外縁部に立地するものが目立つようになった.それらの温泉浴場は,手軽な行楽地として,繁華な市街地から離れて保養する場所となっていた.

  • 和田 崇
    2022 年 17 巻 2 号 p. 286-302
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/06
    ジャーナル フリー

    本稿では,広島アジア競技大会の開催を契機として,広島市にいかにしてボランティア文化が定着し,その担い手や地域社会にいかなる便益をもたらしたかを解明した.広島市では,広島アジア競技大会を通じたボランティアへの関心の高まり,全国的な「ささえるスポーツ」政策の推進,大規模スポーツイベントやクラブチームなどボランティア活動機会の確保を背景に,2001年に広島市スポーツイベントボランティアが創設された.この事業は担い手にも地域社会にもさまざまな効果をもたらし,有意義な取組みであったと評価できる.ただし,それは長い時間をかけて同事業を行政主導・非日常のものから市民主体・日常のものへと変化させ,スポーツ経験者以外の多様な市民が自発的に参加できるようになったからこその評価といえる.

  • 佐藤 洋
    2022 年 17 巻 2 号 p. 303-318
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/06
    ジャーナル フリー

    本稿では2020年6月に第32次地方制度調査会が公表した「2040年頃から逆算し顕在化する諸課題に対応するために必要な地方行政体制のあり方等に関する答申」で提案された「地域の未来予測」を手がかりに,東京大都市圏の市町村へ財政運営に関するアンケート調査を実施し,数量化III類を用いた分析により,財政状況への認識と将来予測,広域連携の関係を検討した.本稿の主な知見は次の3点である.①財政状況を健全であると認識し,長期の将来予測を実施している市町村は広域連携に消極的な傾向がある.②2040年頃の将来予測の必要性を感じながらも将来予測をしていない,または短期の将来予測に留まる市町村が多い傾向がある.③財政関係の広域連携では構成市町村間で温度差がある.以上の知見により,財政の将来予測では国や都道府県が市町村へ支援を行う必要があること,地域の未来予測においても市町村同士の水平的連携による情報交換が重要になることが示唆される.

  • 根田 克彦
    2022 年 17 巻 2 号 p. 319-337
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/17
    ジャーナル フリー

    本稿は,新型コロナウイルス感染初期の2020年初頭から新型コロナウイルス対策がほぼ終了した2022年初頭までの,イギリス政府による飲食店に対する感染対策と支援措置を時系列的に整理し,最後に,新型コロナウイルス対策が,イギリスのタウンセンター政策に及ぼした影響を論じる.感染症の拡大初期に,イギリスはロックダウンのような規制に消極的で,飲食店に対する経済的支援対策を充実した.しかし,まもなく政府は,ロックダウンを実施し,感染を抑制する多くの規制を設定した.また,都市計画の一時的な規制緩和による飲食店の支援措置を実施したが,そのなかには公式な都市計画としたものがある.それにより,タウンセンターにおける事業所の交代を容易にして,ポストコロナにおけるタウンセンターの再生を意図した.すなわち,イギリスは新型コロナウイルスを,タウンセンター政策を根本的に変更するきっかけとして利用したといえる.

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