本研究では,近年の国勢調査の回答状況における地域差とその推移を俯瞰する.具体的には,各種の回答率と都市化度との関連を都道府県単位で分析した.その結果,(1)聞き取り率は2005年以降上昇しつつ地域差も拡大してきた一方,2020年調査(推計値)では都市–農村間の地域差は維持ないしは縮小する可能性があること,(2)コロナ禍によって減少した調査員回収はインターネット回答よりも郵送回答によって代替されており,農村部でその影響が相対的に大きかったこと,(3)外国人の不詳率は概して日本人よりも高い水準にあり,地域差も大きく拡大傾向にあることが示された.ここから,回答状況とその地域差の水準は指標や調査年,国籍(日本人/外国人)によって異なる一方,都市–農村間の地域差そのものは一貫してみられることも示された.これらがもたらす疑似的な地域差の影響に留意しつつ,国勢調査のデータを実証研究に活用していくことが期待される.