E-journal GEO
Online ISSN : 1880-8107
ISSN-L : 1880-8107
調査報告
近代化産業遺産の保存と活用に関する政策的対応の比較
森嶋 俊行
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 9 巻 2 号 p. 102-117

詳細
抄録

本稿では,文化庁による「近代化遺産総合調査」と経済産業省による「近代化産業遺産群」認定事業を取り上げ,独自のデータベースを構築し,産業の地域構造史との関連を踏まえつつ,近代化産業遺産の地域的特性を明らかにした,その上で,両者の政策を比較するとともに,近代化産業遺産をめぐる政策的課題を検討した.
文化庁の調査の対象は全国を網羅する形で,産業遺産のみならず,交通,建築,土木,軍事施設など,幅広い分野にわたり,文化財として価値のある遺産を数多くリストアップしている.これに対し,経済産業省による「近代化産業遺産群」では,近代工業化に関わるストーリーをもとに,遺産群を線で結ぶように認定しており,産業観光を含め,遺産の経済的価値を重視する傾向が認められる.産業遺産の意味のある保存と活用には,文化的価値と経済的価値の両者を考慮することが重要であり,省庁間の連携を進めるような政策展開が求められる.

著者関連情報
© 2014 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top