2025 年 7 巻 2 号 p. 101-102
今回「2024年度未来研究プロジェクト海外学会参加費助成」に採択され,11月8–10日にマレーシアのクアラルンプールで開催されたアジア静脈経腸栄養学会(PENSA2024)に参加した.私がPENSAに参加するのは2018年のソウルでの開催以来2回目であった.以前訪れた時に,PENSAの研究内容は日本人と体型や食事内容の相違が小さく,共感できる点も多かったことから,今回再度参加することとした.
私は栄養治療部を兼任しており,久留米大学病院にて全科型Nutrition Support Team(以下,NSTと略)を担当している.久留米大学病院では,2016年以降に病棟単位の多職種栄養カンファレンスを導入した.多職種栄養カンファレンスは,病棟担当管理栄養士を中心として,医師・看護師・薬剤師・理学療法士が集まって週に1度,病棟カンファレンスを行う.カンファレンスで栄養療法の方向性を周知統一する.より特殊な栄養療法が必要な場合はNSTが介入することとした.導入前後でのNST活動と病院在院日数の影響を後方視的に研究したところ,カンファレンス施行後より病院内の平均在院日数が有意に減少し,NSTが必要な患者の抽出がよりスムーズになることがわかり,本内容を報告した.今回は自身の未熟さからプレゼンテーションの機会には至らずポスター展示のみであったが,日本の特定機能病院のデータをアジア諸国に紹介する貴重な機会を得ることができた(写真1).

ポスターには珍しく顔写真の添付が規定されていた.
学会期間中は各諸国のさまざまな研究を聞くことができ,非常に勉強になった.特にParenteral Nutrition(以下,PNと略)に関してはグルタミン製剤やω3系やMedium Chain Triglyceride(MCT)の脂質を含有した製剤など,日本では未使用の製剤を用いて臨床や研究がなされており,この点に関してはアジアの中でも日本がまだ普及していない分野であることを実感した.一方で経腸栄養に関しては半固形などの製剤への工夫や,嚥下訓練やリハビリテーションなどの普及から,「腸を使った」栄養管理の工夫は日本の特色であり,高齢者をはじめとした低栄養の予防および改善への努力はアジアの中でも先行しているなと感じられた.
日本からはInvited Facultyとして理事長の比企直樹先生がPNと胃がん術後のサルコペニア予防とグレリンを考慮した術式の研究について,理事の森直治先生ががん悪液質とGlobal Leadership Initiative on Malnutrition(GLIM)についての研究と日本の保健医療への発展,NTT関東病院の上島順子先生が高齢者の栄養介入について報告しておられた.またOral Presentationでは熊本リハビリテーションの吉村芳弘先生がリハビリと経口摂取管理での発表をされPENSA Awardsを取得なされ,JSPENメンバーがPENSAでも素晴らしい講演をなされていた.
せっかく栄養の学会に来ていることから,普段経験出来ない料理を楽しまないといけない.マレーシアは多民族国家であることもあり食事も多様性があった.その中でも「ニョニャ料理」として有名な「ラクサ」という麺料理がある.宗教上の理由から牛肉や豚肉を用いず,魚やエビ,ココナッツから出汁をとった料理として地元ではよく食べられている.日本人のラーメンに近い感覚だろうか.今回はこれに焦点を当てて何件かハシゴすることにした.マレーシアに到着直後に,クアラルンプールのシンボル「ペトロナスタワー」にあるフードコートにてシンプルなラクサを食した.ω3系の脂肪(Fish oil)が多量に入った独特の透明な魚介系スープであり,久留米の豚骨スープに慣れた自分には抵抗が強く結構なクセがあった.これが「ラクサ」か…と思いながら周りを見渡すと,皆が黄色のラクサを食べている.後から知ったのだが,特にクアラルンプールは「カレーラクサ」が有名らしい.翌日,モノレールに乗り「Lot10」という商店街でカレーラクサを注文した.前回のFish oilの匂いはマスキングされ,さらにココナッツオイルも含まれて非常に美味であった(写真2).行かれた際はぜひおすすめしたい.

日本のお揚げのような具も美味.
ラクサ調査は単独であったが,夕食は日本から来られた方々とご一緒させていただき,JSPENで活躍されている皆さんとお話しする機会を得られたことは非常に幸せな時間であった.
PENSAは欧米の学会と比較しても,距離や金額的にも参加しやすい国際学会である.また今回のように助成をいただければ国内での学会よりも安価になることも考えられる.PENSAは2025年10月にシンガポールで行われるとのことであり,日本からの便も多く観光地も多彩であることから,一度国際学会に挑戦してみたいと思われている会員の方には是非おすすめしたい.余談であるが,PENSA2025の事務局の方に「来年もぜひ行ってみたい」と挨拶すると,マーライオンの人形をプレゼントしてくれたので,事務局に代わって宣伝させていただく.
今回,このような機会をJSPEN会員の皆様からいただいたことに感謝を述べ,今後JSPENの活動に何らかの形で貢献できればと考えている.