学会誌JSPEN
Online ISSN : 2434-4966
最新号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
目次
原著
  • 中畠 賢吾, 山内 勝治, 古形 修平, 米倉 竹夫
    原稿種別: 原著
    2025 年7 巻2 号 p. 63-68
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/28
    ジャーナル フリー HTML

    【目的】重症心身障がい児・者において経皮内視鏡的胃瘻造設術(Percutaneos Endoscopic Gastrostomy;PEG)が困難な症例に対し,当科で施行している腹腔鏡補助下経皮内視鏡的胃瘻造設術(Laparoscopic-assisted Percutaneous Endoscopic Gastrostomy;以下,LA-PEGと略)の安全性と有用性をあらためて検討した.

    【対象および方法】2005年から2022年にLA-PEGを施行した32例を対象とし,LA-PEGの適応理由,手技,合併症の発生率などを後方視的に検討した.

    【結果】LA-PEG導入初期の12例は多孔式で行ったが,後期の20例では臍部単孔式に移行した.手術時間は,多孔式手術例は118.2 ± 38.1分であったのに対し,臍部単孔式手術例では125.4 ± 28.4分と,手術時間に明らかな有意差を認めなかった.全例で胃壁からの出血や他臓器の誤穿刺や損傷などの術中合併症を認めなかった.

    【結論】重症心身障がい児・者に対しLA-PEGは安全に胃瘻を造設でき,造設後も重大な合併症はみられず,経腸栄養を早期に再開できるという点で有用であった.

症例報告
  • 久松 千恵子
    原稿種別: 症例報告
    2025 年7 巻2 号 p. 69-73
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/28
    ジャーナル フリー HTML

    症例は1歳2カ月男児.日齢33に腸回転異常症・中腸軸捻転を発症し,残存小腸5 cm・回盲弁無しの超短腸症となった.発症時腸瘻を造設し,4カ月時に腸瘻閉鎖を行った.栄養は経口摂取と静脈栄養を併用.腸瘻閉鎖前の20%イントラリポス®の平均投与量は0.8 g/kg/dayで,脂肪酸分画にて必須脂肪酸欠乏の指標であるTriene/Tetraene比(以下,T/T比と略.基準値0.02以下)は0.02だった.腸瘻閉鎖後に脂肪乳剤を0.3 g/kg/dayまで漸減すると,T/T比は0.19と増加し必須脂肪酸欠乏と診断した.腸瘻閉鎖後の便脂肪染色は陽性が続き,経口脂肪摂取量の増量は出来なかった.その後T/T比を元に脂肪乳剤を1 g/kg/dayまで増やすと,T/T比は0.02まで低下したことから,患児の場合,必須脂肪酸欠乏予防に20%イントラリポス® 1 g/kg/dayの投与が必要と考えられた.

  • 吉田 稔, 宮城 朋果, 角 和恵, 田中 優子, 菅原 順子, 日高 佑紀, 山田 大地, 内藤 みなみ, 荒木 浩, 吉田 徹
    原稿種別: 症例報告
    2025 年7 巻2 号 p. 75-81
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/28
    ジャーナル フリー HTML

    【はじめに】銅欠乏は重度の場合,血球減少や不可逆的な神経障害を引き起こすが,本邦では銅の薬剤はなく,治療法も確立していないためピュアココアや栄養補助食品等を用いて各施設が試行錯誤している.市販の銅亜鉛含有粒状サプリメントを用いて順調に銅欠乏を補正できたので報告する.

    【症例】高度慢性下肢虚血による皮膚潰瘍で入院となった維持透析施行中の80代女性.入院時の採血で血清銅22 μg/dLであり,ピュアココアが開始された.しかし,嗜好や飲水制限により十分量のココアの摂取ができず亜鉛内服も影響し退院直前には血清銅19 μg/dLまで低下した.退院後からネイチャーメイド®マルチミネラルを1日1粒開始し,血清銅は順調に上昇し130日で中止し,下腿潰瘍も改善した.

    【結論】銅亜鉛含有粒状サプリメントにより,嗜好や水分制限の問題を回避し銅欠乏を補正可能であった.適応をもつ医療用医薬品がない現状において銅欠乏に対する有用な選択肢になり得る.

    注意:本論文は特定の臨床状態での有用性を検討したものであり,ネイチャーメイド®マルチミネラル自体の有用性・無害性を示したものではない.本論文の内容に基づく使用に際しては,指示する医師の責任において行う必要がある.

  • 大久保 正彦, 遠藤 眞央, 菊谷 武, 古株 彰一郎
    原稿種別: 症例報告
    2025 年7 巻2 号 p. 83-87
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/28
    ジャーナル フリー HTML

    患者は80歳女性.介護施設入所中,半年の間に食欲不振,抑うつ,activities of daily living低下,肺炎の症状が出現し,当院精神科病棟に入院となった.入院時,姿勢反射障害,口唇のジスキネジアを認めた.薬剤性パーキンソニズムを疑い,薬剤の整理をしたが症状は改善しなかった.入院3日目に嚥下内視鏡検査を実施し中等度の嚥下障害と診断された.入院23日目に診断的治療としてレボドパを開始し,嚥下内視鏡検査の再評価にて嚥下障害の改善を認めた.以上の経過より薬剤性パーキンソニズムにパーキンソン病が合併していたと診断した.症状が改善し85日目に退院となった.本症例ではドパミン補充療法により,定型抗精神病薬およびパーキンソン病によるサブスタンスP低下に起因する嚥下障害が改善したと考えられる.精神科病棟における長期療養患者の嚥下障害は原因が多岐に渡ることもあり,その診断と治療には主治医との慎重な連携が重要となる.

施設近況報告
  • 小林 このみ, 大村 健二, 土屋 裕伴, 小林 理栄, 新井 亘, 德永 惠子
    原稿種別: 施設近況報告
    2025 年7 巻2 号 p. 89-94
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/28
    ジャーナル フリー HTML

    我々は,適正な静脈栄養処方の普及を目指し2018年1月に末梢静脈栄養(peripheral parenteral nutrition,以下,PPNと略)セット処方を作成した.セット処方はブドウ糖加アミノ酸輸液と脂肪乳剤を組み合わせたもので,ルートキープには生理食塩水を用いた.NPC/N比が150前後になるようエネルギー量410 kcal~1,130 kcalの4種類を作成した.セット処方を運用開始して3年後の1年間において,PPN投与患者のセット処方使用群と非使用群では,1日あたりの栄養投与量はセット処方使用群で有意に多かった.セット処方運用開始直後の1年間をI期,運用開始3年後の1年間をII期として,各月のPPNを投与した患者における1日あたりの栄養投与量の中央値を比較した.I期と比較し,II期で総エネルギー投与量,脂質投与量は有意に増加した.PPNセット処方の使用率増加がPPNによる栄養供給量を増加させるだけでなく,PPNにおける脂肪乳剤併用率の上昇をもたらす可能性が示唆された.

  • 遠藤 美織, 丸山 聖子, 産本 陽平
    原稿種別: 施設近況報告
    2025 年7 巻2 号 p. 95-100
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/28
    ジャーナル フリー HTML

    【目的】在宅医療の介護者負担の一つに,特殊な形態の食事調理がある.我々は物性等調整食や栄養素等調整食を自施設で調理,販売しておりその有用性や今後の展望について考察する.【方法】2019年2月~2024年6月の期間に,当院で販売する介護食「ラポール」を利用した患者を対象とし,栄養指導記録から患者背景,販売数,継続利用率,購入動機,利用後の感想を調査した.【結果】対象は45名で年齢の中央値[interquartile range(IQR)]は18歳未満が7名(14[13,15]歳,男児1名,女児6名),18歳以上が38名(86.5[80,91]歳,男性21名,女性17名)だった.販売数は470件で,2回以上の継続利用は18歳未満100%,18歳以上34.2%であった.購入動機は「嚥下調整食の調理負担」,「試験外泊時の食事提供のため」が挙げられ,「病院食と同様の食事が在宅で利用でき安心」などの好意的な意見があった.【結語】介護食「ラポール」は在宅医療における新たな食支援の形として有用な可能性がある.

学会参加記
報告記
編集後記
feedback
Top