学会誌JSPEN
Online ISSN : 2434-4966
最新号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
目次
原著
  • 榎田 滋穂, 片岡 明美, 伊丹 優貴子, 藤原 彩, 中屋 恵梨香, 松下 亜由子, 川名 加織, 斎野 容子, 井田 智, 熊谷 厚志
    原稿種別: 原著
    2023 年 5 巻 3-4 号 p. 99-106
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー HTML

    【目的】乳がん診断時より肥満度が上昇した患者は乳がん再発および死亡リスクが高いと報告されている.本研究では肥満乳がん患者に対する減量栄養指導の成績を明らかにするため,治療内容,指導回数,頻度と体重減少率の関連を検討した.

    【対象および方法】2017年7月から2020年3月に,減量目的に栄養指導を受けた乳がん患者を対象とし,栄養指導前後の体重変化を後方視的に調査した.3%以上の体重減少を認めた症例を「減量達成群」,3%未満を「減量未達成群」として,患者背景,指導回数,頻度,期間との関連を比較検討した.

    【結果】220例中,120例(55%)で3%の減量が達成された.減量達成群では指導回数4回以上,介入期間5カ月以上の患者が有意に多かった.多変量解析では指導回数4回以上が減量達成と有意に関連していた.

    【結論】栄養指導を4回以上行うことは,3%以上の減量達成につながる可能性が示唆された.

臨床経験
  • 藤井 喜充
    原稿種別: 臨床経験
    2023 年 5 巻 3-4 号 p. 107-111
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー HTML

    (目的)初回通過効果(first-pass effect;以下,FPEと略)は,吸収後の薬剤が経門脈的肝臓通過時に代謝される(多くは失活)ことで,効率は門脈血流量(Portal flow volume;以下,PFVと略)と相反する.本研究では,胃瘻栄養の薬剤至適投与タイミングを明らかにする.

    (方法)胃瘻栄養児5例(男児2例,平均7.6歳)に1時間で310.8 mL/m2のイノラス®配合経腸用液は水分のみ,1/2濃度,原液で,超音波パルスドプラ法で体表面積換算のPFVを計測した(開始前-後0.5,1,1.5,2,3時間).対照は等量飲水の健常児18例である.

    (結果)対照は開始前833.2 mL/分/m2,以降2.1,1.6,1.3,1.2,1.1倍であった.胃瘻栄養児の開始前は水分のみ814.1,1/2濃度1,040.2,原液938.6 mL/分/m2で,対照と同様の推移であった.

    (結論)胃瘻注入開始時点の薬剤注入で,FPEによる失活の抑制が予測される.

症例報告
  • 沖田 幸祐
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 5 巻 3-4 号 p. 113-117
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー HTML

    タムガイド®はタムガイド®ファイバーとタムガイド®光源装置からなるハンディタイプの経鼻胃管先端位置確認システムである.先端にLED光のうち生体透過性の高い赤色光を採用しており,経鼻栄養チューブに挿入し使用することでチューブ先端の胃内挿入を体表から直接確認することができる.今回,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患直後の隔離患者2名に対し,ベッドサイドで経鼻栄養チューブを挿入した.この際にタムガイド®を使用し1例では安全に胃内到達の確認ができ,遅滞なく薬剤の注入を開始することができた.タムガイド®はCOVID-19罹患患者のような接触を最低限に減らしたい患者の経鼻栄養チューブ挿入時に有効である可能性が示唆された.

  • 金村 剛宗, 吉川 恵子, 関 徹也, 松永 恭典, 守屋 まりこ
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 5 巻 3-4 号 p. 119-123
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー HTML

    神経性やせ症(anorexia nervosa;以下,ANと略)では,様々な臓器障害を合併し,治療に難渋する.今回,重症AN治療中,血清リン値の激減により心停止となった症例を経験した.症例は19歳,女性.AN治療中,意識障害となり,前医より転院となった.来院時,body mass index:10.7 kg/m2とるい痩著明,ショック状態であり,輸液,カテコラミン投与を行った.Refeeding syndromeの高リスクであったが,低血糖と肝機能障害があり,糖質投与にて予定とした初期エネルギー投与より増加した.血清リン値は正常であったが,翌日に激減し,心停止となった.以後,リンの補充を行い,循環は安定した.本症例のように低血糖があるANでは,ある一定以上のエネルギー投与は避けられず,血清リン値が激減する可能性があり,血清リン値が正常であっても,再栄養開始とともに頻回に血清リン値を測定し,リン製剤の補充のタイミングを逸さないことが重要である.

  • 斗野 敦士, 平松 和洋
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 5 巻 3-4 号 p. 125-129
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー HTML

    致死的な合併症が少なく,長期間使用可能な中心静脈カテーテルとしてperipherally inserted central venous catheter(以下,PICCと略)が推奨されている.2015年からは看護師による特定行為の1つとしてPICC挿入が認められ,安全性や有効性が報告されている.今回PICC挿入後に上腕が腫脹したためPICCを抜去したが,改善がなく減張切開を行った症例を経験した.当初は壊死性筋膜炎を疑ったが最終的には静脈炎による血液うっ滞が原因の筋炎と診断した.約3カ月の治療の結果,創は治癒し上肢に重篤な機能障害は認めていない.今後,急性期治療においてもPICC挿入件数がさらに増加すると予想される.それに伴い新たな合併症が発生し,中には致死的なものも生じうる.致死的な合併症を回避するために,PICC挿入の適応を明確にし,PICC挿入手技と管理に関する十分な知識を得た上での手技の実施が重要である.合併症に関して早期発見と迅速で適切な治療が重要でありチームとして対応することが求められる.

学会参加記
編集後記
feedback
Top