学会誌JSPEN
Online ISSN : 2434-4966
報告記
2024年度国内施設研修支援制度報告記
廣瀬 芽衣
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2025 年 7 巻 2 号 p. 111-112

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 研修概要

1. 研修施設名

滋賀医科大学医学部附属病院栄養治療部

2. 研修期間

2024年12月16日~12月20日

 報告

私は,今年度からNutrition Support Team(以下,NSTと略)の業務に関わるようになりましたが,自施設でNST専門療法士臨床実地修練を受講したため,自施設のNST活動しか知りませんでした.今回,滋賀医科大学医学部附属病院の研修内容がNST活動に力を入れていたため,NSTや栄養管理を勉強して今後の臨床業務やNST活動に活かしたいと思い,研修を希望しました.

2024年12月16日から20日の5日間,滋賀医科大学医学部附属病院栄養治療部で研修させていただいたため,報告します.

滋賀医科大学医学部附属病院は,滋賀県内の患者だけでなく,京都府や三重県の重症患者も受け入れており,特定機能病院として幅広い地域の高度急性期医療を担っています.

栄養教育にも力を入れており,研修医の先生方が栄養治療部で研修されていたり,日本栄養治療学会のNST専門療法士の認定教育施設として研修を年に複数回実施され,多くの院外スタッフを受け入れていました.また,栄養治療部で勉強会を月2回開催されており,研修中に「膵切除と栄養」についての勉強会に参加させていただきました.外科の先生と管理栄養士の方から講義があり,膵切除の術式や術後の栄養上の問題点,消化酵素剤・止瀉薬の飲み方,術後の脂肪制限についての考えなどを教えていただき,大変勉強になりました.

NST回診は週2回行っており,1回30名以上の患者に介入されていました.NST介入依頼方法は,医師・看護師からの依頼と管理栄養士の入院時栄養スクリーニング結果からの介入提案となっていました.また,栄養治療部ではNST介入の提案をする疾患を決めており,治療期間中に低栄養になるリスクが高い疾患に対して早期に栄養介入する体制が整っていました.

間接熱量計を用いた栄養管理を実施されており,現在は,筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis;以下,ALSと略)・スタンフォードA型大動脈解離の患者や多胎妊婦には必ず測定されていました.また,Harris-Benedictの式で求めた必要エネルギー量を投与していても体重が減少し続ける患者や摂食障害の患者など必要な患者にも用いていました.必要エネルギー量の算出方法は栄養治療部内で疾患・病態ごとにマニュアル化しており,今までに測定した間接熱量計のデータを元に算出方法を定めている疾患もありました.NST介入患者の必要エネルギー量の算出はマニュアルや間接熱量計の結果より管理栄養士が行っており,NSTカンファレンスで提案していました.

間接熱量計は管理栄養士が測定しており,実際の測定を見学させていただきました.マスクからの息漏れの確認方法や測定中に注目するポイントなど教えていただきました.今回見学をさせていただいた患者は,測定前のマスク装着時から息苦しさの訴えはありましたが,管理栄養士が患者の様子やモニター上の呼吸数を確認し,最後まで測定することができました.しかし,患者からの息苦しさの訴えなどの理由で測定が困難な場合もあり,測定の難しさや,測定前に説明をしっかり行い患者に測定に協力していただくことが重要だと感じました.

今回の研修では摂食嚥下支援チームの見学も希望させていただいており,毎週木曜日の午後に耳鼻咽喉科・頭頸部外科が行っている嚥下内視鏡検査(Videoendoscopic Evaluation of Swallowing;以下,VEと略)を見学させていただきました.VEは入院・外来の患者を対象にしており,主科からの対診依頼で医師・言語聴覚士・歯科衛生士で行っていました.当院は嚥下造影検査を主に行っており,脳血管疾患患者や高齢者の入院中の食形態検討目的の検査がほとんどですが,滋賀医科大学医学部附属病院ではALS患者の現在の嚥下機能の評価やパーキンソン病患者の在宅療養に向けての嚥下評価を目的とした検査もされていました.当院ではVEは年に数件であることから,VEについてほとんどわからなかったため,言語聴覚士の方から検査方法や嚥下機能に問題がある患者とない患者の画像を見ながら結果の評価を教えていただき,大変勉強になりました.

今まで私はNSTに介入依頼することは敷居が高い印象がありましたが,滋賀医科大学医学部附属病院はNSTに相談しやすい環境となっており,今回の研修で私の中のNSTのイメージが大きく変わりました.今回学んだことは今後実施を予定している担当病棟の病棟型NSTの活動に繋げ,より良い栄養管理を行っていきたいです.

また,今回の研修では,病棟での栄養スクリーニング,入院時の栄養指導,集団教室,外来化学療法室の栄養指導,Intensive Care Unit・Stroke Care Unit・病棟配置をされている病棟の病棟業務や栄養管理など幅広く教えていただき,多くの学びを得ることができました.

最後になりますが,お忙しい中研修を受け入れてくださり,ご指導くださった滋賀医科大学医学部附属病院栄養治療部の皆様に心より感謝申し上げます.

写真1. 滋賀医科大学医学部附属病院の外観
 
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