学会誌JSPEN
Online ISSN : 2434-4966
報告記
2024年度国内施設研修支援制度報告記
木戸 里佳
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2025 年 7 巻 2 号 p. 113-114

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 研修概要

1. 研修施設名

東京都立多摩総合医療センター

2. 研修期間

2024年11月11日~11月15日

 はじめに

病院管理栄養士として,生活習慣病の栄養指導・栄養管理に携わる中で,若年高度肥満症患者に対する栄養指導が難渋したことを幾度か経験し,肥満症外来のある専門病院ではどのような治療を行っているのか勉強したいと思っておりました.その中で,今回JSPEN国内施設研修支援制度にて,肥満症に対し外科的治療を行い,多職種チームで体系的な関わりを行っている施設での研修があることを知り,11月11日~15日まで東京都立多摩総合医療センターへ研修に行かせていただきました.

 報告

高度肥満症患者に対する減量・代謝改善手術は月2~4回実施されており,初日に腹腔鏡下スリーブ状胃切除術を見学させていただきました.オペ室で間近に外科手術を見学したのは初めてのことでしたので,非常に貴重な経験となりました.手術は想像していたよりもはるかに短時間で,侵襲も少ないことに驚嘆しました.

2日目は外科の畑中医師より,減量手術に関するレクチャーをしていただきました.腹腔鏡下スリーブ状胃切除術は2014年~保険適用となり,日本でも対象患者は多くいるものの,先進国の中での手術件数はかなり少ないこと,罹患率が短いほど効果的で,外科治療を受けることで結果的には総医療費が抑えられること,肥満関連疾患の改善や寿命の延長といった良好な治療成績であることを教えていただきました.一方で,手術をすることがゴールではなく,術後も食事療法や運動療法は必須であること,中には術後にリバウンドする患者もおり,あくまでも治療の主体は患者本人による栄養・食事管理であることをお教えいただきました.外科手術対象患者は6カ月前より手術適応可能かどうかの判断をするため,自力での5%体重減少と禁煙が義務づけられており,その期間中は管理栄養士による個別栄養指導,外科医師による減量手術外来,内分泌代謝内科医師による外来,精神疾患の既往があれば,精神科医師の介入,臨床心理士による心理相談が同日に実施され,実際に手術適応となるのは対象患者のうち約4割とのことでした.

また前日手術後の入院患者の元に管理栄養士が訪室する際に同席させていただき,飲水および食事の摂り方についての指導を見学させていただきました.見学した患者2人のうち1人は嘔気の訴えがあったものの,嚥下造影検査(Videofluoroscopic Examination of Swallowing;VF),起き上がり動作や会話に大きな問題はなく,手術翌日でも比較的元気に過ごされているのが印象的でした.

3日目に参加させていただいたスリーブミーティング(患者会)は,奇数月の第2水曜日に公認心理士と管理栄養士によって実施されていました.手術前後の患者同士が,それぞれの体験と知恵を共有し,健康な生活習慣を身につけ実践できるようにすることを目的に,患者だからこそ分かち合える不安や,本音を表出できる貴重な機会となっていました.

また同日に実施されていた外科医師による肥満外来や,術前患者の外来栄養指導,スリーブカンファレンスにも参加させていただきました.スリーブカンファレンスは月1回,水曜日16時半~外科医師・内分泌代謝医師・精神科医師・心理士・栄養士が参加し,手術予定の患者について情報共有を行い,今後の方針等について検討されていました.

4日目の午前中は,世界糖尿病デーに合わせて,糖尿病フェスタが開催され,各職種による体験ブースに多くの来院者が立ち寄られており,盛況でした.

また午後からは私が希望した厨房内の見学もさせていただきました.その後,減量指導の際に患者に勧めることがあるフォーミュラ食について,管理栄養士から実際の患者に指導した際の体験談も交えてお聞きすることができました.

5日目は予定入院患者の入院前アレルギー問診に同行させて頂きました.その後,糖尿病教育入院患者に対する,医師・管理栄養士による集団教室へ参加し,午後からは栄養科長よりスリーブ手術関連の学会発表の内容説明,栄養科としての取り組みや今後の方向性等について,豊富なお話を伺わせていただきました.

5日間の研修はとても充実しており,総合病院ならではの規模の大きな取り組みをはじめ,高度肥満症患者に対する最新の知見や,多職種チームでの体系的な関わり方を学ばせていただき,より幅広い視点や視野で患者を診ることができる管理栄養士としてのスキルアップに繋がったと思います.研修で得た知識は,当法人グループ3病院内で共有し,生活習慣病患者に対する栄養介入方法について,新たに検討していく所存です.

最後になりましたが,今回ご多忙の中,研修を快くお受入れいただきました東京都立多摩総合医療センターの畑尾先生をはじめ,平中栄養科長ならびに管理栄養士の皆様,総務課赤井様に深く感謝いたします.そして,このような機会を与えて下さったJSPEN国内施設研修支援制度に関わる皆様,研修に対して理解を示しサポートして下さった職場の皆様,誠にありがとうございました.

 
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