2025 年 7 巻 3 号 p. 119-125
【目的】低蛋白質栄養状態への経腸栄養投与開始時に問題となる糞便性状悪化および血漿リン濃度低下について,新規濃厚流動食による効果を,ラットを用いて検証した.
【対象および方法】胃瘻を造設した低蛋白質栄養ラットの胃内へ新規濃厚流動食または市販の対照濃厚流動食を投与し,濃厚流動食の投与開始から3日間の血漿リン濃度を測定した.また,2週間の持続管理を行った際の体重および糞便性状スコアを基に栄養評価を行った.
【結果】新規濃厚流動食群では投与開始翌日の血漿リン濃度が対照濃厚流動食群よりも有意に高値であり,栄養再開初期の血漿リン濃度の低下を抑制することが示唆された.2週間の持続栄養管理では新規濃厚流動食群で投与期間を通して体重は増加し,糞便性状スコアも良好な結果が得られた.
【結論】新規濃厚流動食は低蛋白質栄養状態への栄養再開初期に糞便性状を悪化させることなく血漿リン濃度の低下を抑制することが示唆された.
Objective: The goal of the study is to investigate whether HINEX RENUTE, a novel enteral nutrition formula [NEF], can address the challenge of initiating refeeding in a state of malnutrition. The NEF was administered to low-protein-fed rats, and stool form and plasma phosphorus levels were evaluated.
Methods: The NEF or another commercial enteral nutrition formula [EF] was administered into the stomachs of rats fed a low-protein diet. Plasma phosphorus levels were measured for three days after the start of administration. Nutritional status based on body weight and stool score based on stool form were evaluated daily in the morning throughout the 2-week dosing period.
Results: The NEF group had a higher plasma phosphorus level the day after dosing, suggesting that the NEF prevented hypophosphatemia. During the 2-week dosing period, consistent body weight increments and stool scoring improvements were seen in the NEF group.
Conclusion: NEF suppressed the decrease in plasma phosphorus and worsening of the stool form during early resumption of nutrition in low-protein-fed rats.
2019年に制定された「ESPEN guidelines on clinical nutrition in the intensive care unit」において,intensive care unit(以下,ICUと略)に48時間以上滞在する全ての重症患者は栄養失調のリスクがあるとされ,そのため,ICU入院48時間以内の早期に経腸栄養を開始することが強く推奨されている1).
重症患者に栄養補給する際に留意すべき点としてリフィーディング症候群(refeeding syndrome;以下,RSと略)と下痢への対処がある2).RSとは飢餓状態にある低栄養患者が栄養を急に摂取することで水・電解質分布の異常などを引き起こす症候群であり,心停止を含む重篤かつ致命的な病態を起こすことが知られている2,3).集中治療患者において栄養開始後1.9日で34%の症例で低リン血症が見られ,集中治療患者におけるRSはまれな病態ではないと報告されている4).RSの発症抑制のために少量からの栄養投与,適切な電解質の補充,ビタミンB1の補充などが推奨されている5).また下痢への対処として,食物繊維を含む栄養剤への変更やペプチドを窒素源として配合する栄養剤への変更などが有効となる可能性がある6).
濃厚流動食として新規に開発されたハイネックスリニュート(以下,RNと略)(株式会社大塚製薬工場,徳島)を使用する場面の一つとしてICUに入室する重症患者への早期経腸栄養を想定している.RNは糖質のエネルギー比率を26%に抑えてあり,糖質負荷の軽減による,血漿リン濃度の低下抑制が期待される.さらに脂質のエネルギー比率を50%に設定し,ビタミンB1やカルニチンを強化してある.また,食物繊維(低メトキシペクチン)を含有し糞塊形成を補助することで,投与期間中の便性状悪化の抑制を企図している.一般的には脂肪含有率の高い食事では糞便性状の悪化が誘発されることが知られている7).しかし,本濃厚流動食のような高脂肪含有食摂取時の糞便性状の悪化が低メトキシペクチンにより抑制されるのかは明らかになっていない.
本研究では,早期経腸栄養が必要となる急性期医療の現場で一般的に使用される濃厚流動食C(以下,流動食Cと略)を対照とし,経腸栄養投与開始時に問題となる糞便性状悪化および血漿リン濃度低下への効果を,2.5%低蛋白質栄養ラットを用いて検証した.低蛋白質栄養ラットは低蛋白質飼料の給餌に伴う摂餌量減少により蛋白質だけでなく熱量も不足した状態となったモデルラットである.
本研究は株式会社大塚製薬工場の動物実験指針に従い,株式会社大塚製薬工場動物実験委員会の承認を得て実施した(承認番号:OPFCAE-2022284).実験動物として7週齢の雄性Crl:CD(SD)ラット(ジャクソン・ラボラトリー・ジャパン株式会社,横浜)を使用した.搬入時の体重は210 g~240 gであった.飼育は温度23 ± 3°C,湿度55 ± 15%,明暗サイクル12時間(明期:7:00–19:00)の環境下で行った.飼料としてAIN-93G(AIN精製飼料,オリエンタル酵母工業株式会社,東京),低蛋白質飼料(オリエンタル酵母工業株式会社,東京)を与え,水については実験期間を通して自由に摂取させた.また,蛋白質エネルギー比率を2.5%に設定した低蛋白質飼料を3週間給餌することで低蛋白質栄養モデルラットを作製した.
2. 飼料および流動食実験濃厚流動食としてRNを,対照濃厚流動食として市販の流動食Cを使用した.2つの濃厚流動食は胃内に留置されたカテーテルを通して持続投与した.
飼料として与えたAIN-93G,低蛋白質飼料,胃内に持続投与したRN,流動食Cの栄養成分組成を表1に示した.
| 栄養成分情報 | 単位 | AIN-93G 100 kcal |
低蛋白質飼料 100 kcal |
RN 100 kcal |
流動食C 100 kcal |
|---|---|---|---|---|---|
| 熱量 | kcal | 100 | 100 | 100 | 100 |
| 蛋白質 | g | 5.0 | 0.6 | 6.0 | 6 |
| 窒素量 | mg | 947 | 941 | ||
| 脂質 | g | 1.4 | 1.4 | 5.6 | 4 |
| 長鎖脂肪酸 | |||||
| 飽和脂肪酸 | g | 2.87 | 2.4 | ||
| n-6系脂肪酸 | g | 0.59 | 0.68 | ||
| n-3系脂肪酸 | g | 0.25 | 0.37 | ||
| 中鎖脂肪酸 | g | 2.60 | 2.0 | ||
| L-カルニチン | mg | 40 | 0 | ||
| 炭水化物 | g | 16.8 | 21.1 | 7.1 | 9 |
| 糖質 | g | 5.9 | |||
| 食物繊維 | g | 1.2 | |||
| 低メトキシペクチン | g | 0.68 | |||
| 水分 | g | 2.51 | 2.51 | 85 | 52 |
| ビタミンB1 | mg | 5.000 | 0.3 | ||
| ミネラル | |||||
| ナトリウム | mg(mEq) | 27.9 | 27.9 | 159.0(6.9) | 175(7.7) |
| 塩素 | mg(mEq) | 158.0(4.5) | 54(1.7) | ||
| カリウム | mg(mEq) | 100.6 | 97.5 | 100.0(2.6) | 155(4.0) |
| マグネシウム | mg(mmol) | 14.0 | 13.9 | 22.5(0.9) | 21(1.7) |
| カルシウム | mg(mmol) | 142.5 | 136.5 | 42.0(1.05) | 67(3.3) |
| リン | mg(mmol) | 89.4 | 50.1 | 82.5(2.7) | 57(1.8) |
入荷後の実験動物34匹から無作為に7匹を抽出し,その7匹にAIN-93Gを給餌しnormal群とした.残りのラットには低蛋白質飼料をそれぞれ3週間給餌することで低蛋白質栄養モデルラットとした.全てのラットに胃瘻造設前日より24時間の絶食を行った.normal群および低蛋白質栄養モデルラットから無作為に抽出された7匹(LPD群)には胃瘻造設当日にイソフルラン麻酔下に腹膜の切開および縫合のみを行った.残りの20匹の低蛋白質栄養モデルラットには同様の麻酔下に腹部正中に約2 cmの切開を加え,6.5 Frのカテーテルを胃体部前壁から胃内に挿入・留置することで胃瘻を造設した.この20匹のラットに対し体重を基に統計解析ソフトEXSUS Ver. 10.0(イーピーエス株式会社,東京)を用いて層別無作為化割付を行い,RNを投与する群(RN群,n = 10)と流動食Cを投与する群(control群,n = 10)の2群に分けた.normal群およびLPD群にはそれぞれの飼料を継続して与え,RN群およびcontrol群に対して飼料の給餌は再開しなかった.
胃瘻造設当日の17時よりRN群とcontrol群に対して各濃厚流動食の胃内持続投与を開始し,1日目と起算した.投与量は1日目70 kcal/kg/day,2日目140 kcal/kg/day,3日目210 kcal/kg/dayと漸増させ,以降は210 kcal/kg/dayに固定した.2週間の投与期間中は体重を3日毎に測定し,糞便の性状を毎日観察した.全ての動物に対して投与開始後の翌朝から3日間,9:00に無麻酔下で鎖骨下静脈より300 μL/dayの採血を行った.2週間の投与の終了後,イソフルラン麻酔下で腹部大動脈より採血し,脱血により犠死せしめた.
4. 糞便性状の観察投与1日目から終了日まで,糞便性状の観察を毎日9:00に行った.糞便の性状は目視にて個別の糞毎に正常便:0点,軽度軟便:1点,軟便:2点,軽度水様便:3点,水様便:4点とスコア化し,スコアの合計値を糞便個数で除した平均値を当該個体の糞便性状スコアとした.
5. 血液生化学検査ヘパリンリチウム入り採血管へ分注した血液は転倒混和後氷上で保管し速やかに遠心分離(3,000 rpm,10 min,4°C)(ユニバーサル冷却遠心機(5930),久保田商事株式会社,東京)し,血漿を採取した.採取した血漿は分析に供するまで–80°Cで保管し,栄養再開初期の血漿では無機リン(IP),2週間の濃厚流動食投与終了時の血漿では血漿中総蛋白(TP),アルブミン(ALB),尿素窒素(BUN),クレアチニン(CRE),ナトリウム(Na),カリウム(K),塩素(Cl),カルシウム(Ca),IP,マグネシウム(Mg),総コレステロール(T-CHO),中性脂肪(TG),総ビリルビン(T-BIL),グルコース(GLU)の測定を行った.測定はオリエンタル酵母工業株式会社に委託した.
6. 統計解析各測定項目の値は平均値(mean)± 標準偏差(SD)で示した.全ての検定で有意水準は両側5%とした.統計解析にはエクセル統計(株式会社社会情報サービス,東京)を使用した.
RN群とcontrol群およびnormal群の血漿リン濃度,体重推移,糞便性状スコアについて,被験群間因子(実験群)と被験群内因子(時点)を2要因とする二元配置分散分析を行い,被験群間因子の主効果について解析を行った.加えて交互作用に有意差が見られた場合は時点毎にもBonferroniの検定を実施した.他の解析には一元配置分散分析を行い,有意差が認められた場合のみTukey-Kramerの検定により群間比較を行った.LPD群は参考値扱いとした.
実験期間中にcontrol群の1匹に胃瘻カテーテルの抜去が確認されたため,全ての解析から除外した.
2. 栄養再開初期の血漿リン濃度栄養再開時の血漿リン濃度の推移を図1に示す.血漿リン濃度について,二元配置分散分析の結果交互作用が認められ,1日目においてRN群ではcontrol群に比して有意に高値を示し(p < 0.05),2日目および3日目はRN群とcontrol群の間に差は認められなかった.

RN群,control群,normal群の3群において実験期間を通して体重は増加したが,LPD群では3日目まで体重は増加したものの以降は変動しなかった(図2).RN群とcontrol群の間に被験群間因子の差は見られなかった(p = 0.14,分散分析).

糞便性状スコアの推移を図3に示した.実験期間を通してnormal群とLPD群の糞便性状スコアは0点であった.RN群の糞便性状について,投与開始から3日目に一時的な軟便化を認めたが,7日目以降ではnormal群と同等の正常便のみが観察された.対してcontrol群では,実験期間を通して軟便や水様便が散見され,糞便性状スコアが0点になることは1日もなかった.

a)糞便性状スコア例
b)糞便性状スコアの推移
血液生化学検査の結果を表2に示す.RN群はcontrol群に比してTP,TGが有意に高く,Clが有意に低かった.TPはnormal群とRN群の間に差が無く,control群が両群に対し有意に低値であった(p < 0.05).TGはnormal群が最も高値であり,次いでRN群,control群となり,全ての群間に有意差を認めた(p < 0.05).また,Clはnormal群とRN群の間に差を認めず,control群が両群に対し有意に高値を示した(p < 0.05).
| 検査項目 | 単位 | control means ± SD | RN means ± SD | control vs RN | LPD means ± SD | normal means ± SD |
|---|---|---|---|---|---|---|
| TP | g/dL | 5.7 ± 0.2 | 6.0 ± 0.2 | p < 0.05 | 5.0 ± 0.1 | 6.2 ± 0.2 |
| ALB | g/dL | 3.2 ± 0.3 | 3.4 ± 0.3 | 3.4 ± 0.2 | 4.0 ± 0.2 | |
| BUN | mg/dL | 18.4 ± 2.1 | 17.0 ± 2.1 | 8.3 ± 2.3 | 14.2 ± 1.1 | |
| CRE | mg/dL | 0.20 ± 0.02 | 0.21 ± 0.01 | 0.32 ± 0.03 | 0.25 ± 0.02 | |
| Na | mEq/L | 140 ± 1 | 140 ± 1 | 140 ± 1 | 138 ± 1 | |
| K | mEq/L | 4.8 ± 0.6 | 4.5 ± 0.3 | 4.6 ± 0.3 | 5.0 ± 0.4 | |
| Cl | mEq/L | 104 ± 1 | 102 ± 2 | p < 0.001 | 108 ± 1 | 102 ± 1 |
| Ca | mg/dL | 10.3 ± 0.3 | 10.6 ± 0.2 | 10.5 ± 0.2 | 10.8 ± 0.2 | |
| IP | mg/dL | 5.9 ± 0.7 | 6.0 ± 0.4 | 4.6 ± 0.6 | 6.2 ± 0.4 | |
| Mg | mg/dL | 1.5 ± 0.1 | 1.5 ± 0.1 | 1.3 ± 0.2 | 1.4 ± 0.1 | |
| T-CHO | mg/dL | 66 ± 12 | 75 ± 13 | 57 ± 14 | 75 ± 11 | |
| TG | mg/dL | 38 ± 17 | 79 ± 11 | p < 0.05 | 55 ± 36 | 209 ± 53 |
| T-BIL | mg.dL | 0.06 ± 0.01 | 0.06 ± 0.01 | 0.19 ± 0.03 | 0.08 ± 0.01 | |
| GLU | mg.dL | 160 ± 10 | 164 ± 6 | 166 ± 19 | 180 ± 24 |
2週間の濃厚流動食持続投与後の体重推移はcontrol群とRN群間で差が認められなかった.したがって,低蛋白質栄養動物に対して2週間の栄養管理を行う上で,RNは流動食Cと同等の栄養補給効果を有すると考えられた.
低蛋白質栄養動物に対する濃厚流動食投与翌日の血漿リン濃度はRN群がcontrol群に比し有意に高値であった.RNを低蛋白質栄養動物に投与した際,血中リン濃度の低下をきたすことや糞便性状を悪化させることなく栄養管理が可能であることが確認された.
投与再開初期における濃厚流動食の糖質・脂質のエネルギー比率が血漿リン濃度に与える影響について,糖質の比率が高いほど血漿リン濃度は低下することが想定されるが4),実際に検証した報告はない.そこで,栄養成分配合比率が血漿リン濃度へ与える影響を体系的に検証したところ,脂質のエネルギー比率が高いほど血漿リン濃度の低下を抑制することが確認された(補足図1).以上より,RNは栄養再開初期の急激な血糖値の上昇を抑え,インスリン分泌を緩徐にすることでリンの細胞内への取り込みを制御し,投与開始初期の血漿リン濃度の低下を抑制する可能性が示唆された.
糞便性状スコアについて,投与開始初期にRN群,control群ともに軽微な上昇が認められた.これは胃瘻造設24時間前から絶食を行った結果腸管機能が低下し,投与された濃厚流動食により急激に大腸内浸透圧が上昇し,大腸内の糞便の水分含有量が増加したためと考えられた8).また,投与開始から3日目にRN群に糞便性状スコアの高値を認めたが,これは開腹手術後の腸管麻痺の状態への濃厚流動食中の食物繊維による影響であると考えられた.開腹手術後には一時的な腸管麻痺が起きることが広く知られている9).また,消化管術後には食物繊維を多く含むものの摂取を控えることが推奨されている10).さらに,開腹手術後の大腸の機能的回復には48~72時間程度を要することが知られている11).RNに含有している低メトキシペクチンは腸内で余剰な水分を保持しゲル化することが知られており12),4日目以降では低メトキシペクチンの水分保持効果が糞塊形成を補助し,正常便の形成に寄与していると考えられた.一般的な下痢への対処として,食物繊維の配合が広く実施されているが,ペクチンを含有した濃厚流動食は臨床でも下痢を抑制する効果が報告されている13).本実験でも同様の結果が得られたものと考えられた.一方で,control群は試験期間を通して糞便性状の悪化が散見された.この原因として,経腸栄養施行時の脂肪便が考えられた.脂質は吸収効率が低いことが知られており,吸収されずに糞便中に排泄されるTGがRN群に比しcontrol群で多い可能性が考えられた.後述の血漿TG値がRN群に比してcontrol群で低値を示していたことも糞便中へのTGの排泄を支持する所見と考えられた.
RN群がcontrol群に比して高値を示したTGについて,上述の脂質の吸収効率に加え,脂質の含有量,脂肪酸の組成およびカルニチンの有無による影響が考えられた.RNは脂質エネルギー比率が高いだけでなく,中鎖脂肪酸の割合が全脂質中の50%と高く,かつ,カルニチンを強化してある.
カルニチンは,長鎖脂肪酸がβ酸化を受ける場であるミトコンドリアのマトリックス内へ取り込まれる際に必要な物質である14).中鎖脂肪酸は門脈を介し速やかに吸収されエネルギーとして使用され14,15),ミトコンドリアへの取り込みにはカルニチンを必要としない15).そのため,RN群ではより効率的に脂質が代謝されたと考えられた.脂質の含有量は流動食Cに比してRNで多く,それに伴い飽和脂肪酸,中鎖脂肪酸もRNの方が多く含まれている.一方,流動食CではRNに比してn-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸の含有量が多い.n-3系脂肪酸は血中のTGを低下させるはたらきがあることが知られている16).これらの複合的な効果の結果としてcontrol群で血中TGが低値となったと考えられた.一般的にはn-6系脂肪酸は総エネルギーの3~4%,n-3系脂肪酸は総エネルギーの0.2~0.5%が必要量であるといわれているため17),流動食C,RN共にこれらが不足することはなく,RN群のTGもnormal群に比して低値であるため,栄養学的に問題はないものと考えられた.
control群と比較してRN群でTPが高値であったのは,糞便中への窒素排泄の違いが関与している可能性も考えられた.窒素は主として尿中に排泄されるが,control群で散見された軟便中には未消化の蛋白質が含まれていた可能性が考えられた.
血漿Cl濃度について,control群がnormal群,RN群に比して有意に高値を示し,normal群とRN群の間に差は認められなかった.これはcontrol群に認められた軟便の影響と考えられた.control群ではRN群に比して軽度な軟便や軟便が散見されたことから便中に排泄される重炭酸イオンが増加し,軽度な代謝性アシドーシスを発症したと考えられた18).代謝性アシドーシスでは喪失した重炭酸イオンに対して代償的に腎におけるClイオンの再吸収が促進される19).その結果control群において,血中Cl濃度が高値を示したと考えられた.
本研究により高脂質かつ食物繊維(低メトキシペクチン)を含有する栄養剤を用いて栄養を再開した場合,下痢や栄養再開直後の低リン血症をきたす可能性が低いことが示唆された.
本研究は組成全体で見た栄養補給効果の検証であり,栄養成分ごとの効果について議論はできない.各成分の効果については今後の研究が必要である.
本研究結果より,ハイネックスリニュートは低蛋白質栄養状態の動物に対し栄養再開直後に糞便性状を悪化させることなく血漿リン濃度の低下を抑制する可能性が示唆された.
本論文の著者らは株式会社大塚製薬工場の社員である.
以下の資料はJ-STAGEにおいては電子付録として掲載している.
補足図1. 脂質含量の違いによる投与初期の血漿リン濃度