学会誌JSPEN
Online ISSN : 2434-4966
報告記
2024年度国内施設研修支援制度報告記
菅野 真美
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2025 年 7 巻 3 号 p. 169-170

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 研修概要

1. 研修施設名

大阪国際がんセンター

2. 研修期間

2025年1月14,15,21,22,28日

 報告

今回の研修は,当院で課題と感じている「多職種での栄養治療への関わり」や「急性期病院での早期栄養評価」を見直すため,他施設での栄養管理の実際を学ぶことを目的に希望しました.特に,短い在院日数の中で行われるがん患者への栄養評価方法や,各職種の先生方の日々の業務の流れ,業務効率を高めながら成果を上げる取り組みについて,重点的に学びたいと思い,研修初日を迎えました.

研修を進める中で,当初の目的から自分が学びたいこと,知りたいことが次々と変化していくのを実感しました.大阪国際がんセンターでの栄養管理を目の当たりにし,当初考えていた課題の再評価ができる貴重な機会となりました.

1. 大阪国際がんセンターの栄養管理体制

大阪国際がんセンターでは,平均在院日数が7日台であり,より早期の栄養介入が求められていました.一般的には,栄養状態が良好と判断されると,一時的な栄養不足が許容される場合もありますが,それが栄養不良の悪化を招く可能性もあります.特に,入院の主目的であるがん治療が終わると,早期に退院する患者が多いため,リスクを早い段階で把握し,適切に対応することが重要であると再認識しました.

大阪国際がんセンターのNutrition Support Team(以下,NSTと略)は,そのリスクを迅速に見極め,見極めにかける時間は「長くても1分」という意識が徹底されていました.「評価はゴールではなくスタート」という考え方が印象的であり,栄養介入の目的は栄養を投与すること自体ではなく,その後体内でどのように代謝され,どう利用されるのかといった,投与の先にある「吸収と代謝を考える視点」の重要性を再認識しました.

臨床現場では治療が優先されるため,それらの過程を意識しなければ,不適切な栄養管理が見過ごされたり,後回しになることもあります.栄養介入が必要か,栄養を今投入すべきかを,体重や食事摂取状況の変化,電解質異常などにフラグを立て,過剰と不足を見極めながら,その流れを意識した介入が求められていました.

こうした方針は,カルテ記載や提案を通じて,医師や看護師をはじめとする多職種と連携し,栄養管理の重要性を共有する形で実践されています.NSTからの細やかな提案が,病院全体での栄養の専門チームとしての立ち位置を確立させており,その影響力を強く感じました.また,週3回のNST回診やHigh Care Unit(以下,HCUと略)・Intensive Care Unit(以下,ICUと略)カンファレンスでの多職種への積極的な情報提供も,栄養療法の教育的役割を大いに担っていると感じました.

患者対応においては,医療者と患者との具体的な目標の共有が印象的でした.食欲不振などの抽象的な表現に対して,「3割の食事量減少でOral Nutrition Supplementを摂取する」や「5%以上の体重減少で経腸栄養を開始する」など,医療者と患者との共通認識を持ち,患者自らが積極的に声を上げるように促す(教育する)ことで,タイミングを逃すことなく良好な栄養管理ができるよう工夫されていました.

2. 栄養管理部門での研修を通じて得た気づき

栄養管理部門では,NST専従管理栄養士と専任管理栄養士,HCU・ICU専任管理栄養士が中心となり,年間6,000件ものNST介入を実施していました.入院栄養指導や聞き取り対応は,疾患別に担当管理栄養士が行い,NST業務をサポートしながら密に連携されていました.さらに,その入院栄養管理は外来へと継続され,栄養指導件数は入院・外来合わせ年間8,000件を超えていました.

また,がんの栄養管理では,臨床栄養管理と給食管理の両輪がうまく噛み合うことで,質の高い栄養管理が実現することを再確認しました.大阪国際がんセンターでは,これまでの経験や患者の症状や要望に応じたデータをもとに,選択可能な食事対応やコメント類がシステムとして組み込まれており,業務効率を徹底的に追求しながら細やかな対応が可能となっていました.また,それらの対応を患者との対話の中で伝え,患者自ら選択できる環境を作ることで,患者の食に対する負担感やストレスを軽減されていました.「患者が摂取できてこその食事」「退院後の見本となる食事」という言葉も非常に印象的でした.

食材や盛り付けへの配慮,ひとつひとつの食器へのこだわり,メニューの豊富さ,検食にかける工夫など,管理栄養士にしかできない栄養管理への思いには感銘を受け,ここが十二分に機能しているからこその栄養管理だということを実感しました.

3. 当院へのフィードバックと今後の目標

今回の研修で感じたことは,質の高い栄養管理の提供には,自己研鑽を止めないことに加え,組織としての体制づくりが重要であるということです.当院では病棟担当制を導入していますが,人数配置や経験値に応じた配置が十分に機能しているか,改めて考えさせられました.病棟スタッフとの距離が近くなることで管理栄養士として頼りにされる場面は増えましたが,その一方で,経験年数が少ないスタッフが安心して知識を発揮できているか,経験を重ねたスタッフが知識を更新しそれを活かせているかなど,検討すべき点も見えてきました.今回の研修を契機に,部署スタッフと話し合い,質の向上を目指した取り組みをスタートさせました.

4. 最後に

このような貴重な研修機会を与えてくださったJSPENの皆様,そしてご多忙の中,研修を受け入れ丁寧にご指導くださった飯島正平先生,松岡美緒先生をはじめ,NST,栄養管理部門の皆様に心より感謝申し上げます.今回の学びを今後に活かし,より良い栄養管理を提供できるよう精進してまいります.

写真1. 研修日の食欲不振食(あっさり食)の鮭茶漬け

手作りサンドイッチや蟹雑炊なども献立に並び,冷奴や生果物などもコメント対応で提供可能となっていました.

写真2. 栄養管理部門

2画面のモニターやプリンター配置など,効率的にNST業務が進められるよう工夫されていました.

 
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