学会誌JSPEN
Online ISSN : 2434-4966
報告記
2024年度国内施設研修支援制度報告記
府金 幸紀
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2025 年 7 巻 3 号 p. 171-172

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 研修概要

1. 研修施設名

神奈川県立こども医療センター

2. 研修期間

2024年12月9日〜12月13日

 報告

私は現在,名古屋大学医学部附属病院にて新生児科・小児科の病棟で理学療法士として勤務しています.主に新生児や小児がんのお子さんと関わることが臨床の大半を締めており,哺乳の問題や化学療法の副作用による栄養障害に直面する機会が多いと感じています.小児に対する栄養管理方法は成人とはどう異なるのかを学びたいと思い,今回神奈川県立こども医療センターへの研修を応募しました.前職場の石川県にある七尾病院ではNutrition Support Team(以下,NSTと略)委員会に所属し,成人の栄養サポートを行った経験があります.その当時,能登NST合宿へ参加し,講師として能登の地を訪れていた高増哲也先生の講義を聴講したことがあったため,誠に勝手ながらご縁を感じました.

神奈川県立こども医療センターの皆様は大変温かく迎えてくださり,NST活動はもちろん,外来の見学や訪問診療にも同行する機会をいただきました.今回の研修で学んだこととしては,成人の栄養障害はいくつかの事象が重なり合って起きるとされていますが,小児の栄養障害の事象は独立しており身体病態の複雑さや行動療法の必要性の有無など個別性が高いことを学びました.また,恥ずかしながら“The first 1,000 days”という言葉を今回の研修で初めて知りました.「胎児期から2歳までの栄養がその後の成長や発達に大きく影響し,生後1,000日間に適切な栄養ケアを受ければ,より健康に成長する」とUNICEFをはじめ世界的に注目されている言葉です.改めて栄養療法は「単独の職種で完結できるほど簡単ではない.いろいろな技術をもった医療スタッフが力を発揮してこそ成り立つのである.スキルミクスは多職種協働ともいわれ,機能するためには個々のスタッフがその枠組みを超えて,獲得していかねばならない3つの条件(知識・技術・調整力)が求められる.」という高増先生のお言葉がいかに重要で,難しいものなのか痛感させられました.

理学療法士は主に機能面へアプローチしますが,近年ではリハビリテーション栄養の言葉が広く浸透し,栄養に関心をもつ療法士も増えてきた印象があります.今回の見学で理学療法士が哺乳の評価・支援を行っていたことがとても印象的でした.今後,自分たちも取り組みたい分野だったため,従事されている先生から実際のお話を伺えたことがとても良い経験となりました.また,理学療法中は1対1で関わる時間が長いため,患者さんやご家族からふとした不安や悩みを聞く場面があります.ささいな情報も場合によってはチームで共有していくことが栄養サポートの一助にもなると感じました.

当院では療法士がNeonatal Intensive Care Unit卒業生の退院後に発達フォローを一定期間行っており,乳幼児の離乳食における悩みに多く直面します.田上幸治先生から伺った自閉症の偏食のお話の中にあった「不器用さがある」「うまく飲み込めず,丸のみしてしまう」「感覚の亢進がある」は小さく生まれたお子さんの離乳食の問題にも通じる分があると感じました.偏食があるお子さんにとって大切なことは「食事は楽しく」を原則とし,食べるという生命を維持するために基礎となる部分が不安やプレッシャーとならないように支援していくことが重要なのだと学びました.実際に外来で保護者の方々と会話をしていると,本人はもちろん,ご家族がプレッシャーを感じている場合がほとんどです.今回の講義で学んだことで解決策の引き出しが増え,今後効果的なアドバイスを行うための一助となりました.

医療現場において多職種連携は非常に重要なことですが,現状は業務に追われることが多く,いかにスタッフの負担なく連携できるかが課題と感じています.高増先生からお話いただいた連携方法として,カンファレンス自体の頻度を増やすという方法にとても驚きました.頻度は増やすものの一度の時間は短縮したそうです.その方法によって各診療科のスタッフと会う頻度が増え,医療者間の関係性が深まることで密なディスカッションができるようになり,結果として業務の効率が上がったことを教えていただきました.こちらは研修後,すぐに実践し業務の効率の向上を感じています.

今回の研修では“食べること”の意味を改めて見直す良いきっかけとなりました.急性期病院で勤務をしていると治療としての意味合いがどうしても強くなると感じています.生きるための栄養としての意味の他に,食べる楽しみや人とのふれあいを感じる時間という意味もある,それはお子さんたちにとっては重要なポイントであり,その視点を踏まえた栄養サポートの提案ができるようになりたいと思いました.また,研修中はNST専門療法士の取得を目指す仲間にも出会うことができ,情報交換を行ったり,新たなネットワークの構築を含んだり有意義な時間を過ごすことができました.

最後になりましたが,ご多用の中,研修の受け入れを快諾いただいた神奈川県立こども医療センターの高増哲也先生,長山美穂先生をはじめとするNST委員の皆様,病院関係者の皆様,国内施設研修支援制度の委員の皆様に厚く御礼を申し上げます.今回学んだ知識を目の前にいるお子さんたちへ還元できるよう,さらに学びを深め,日々の臨床業務やスタッフ育成に取り組んで参りたいと思います.

 

掲載している写真は,被写体となった方から掲載への同意を得ています.

写真1. 神奈川県立こども医療センターNST作成冊子の表紙
写真2. 高増哲也先生(左),長山美穂先生(右)と
 
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