2025 年 7 巻 4 号 p. 179-183
【目的】経腸栄養症例を対象に,血清Na値と患者特性および食塩補給量と水分補給量との関連をみることで,低Na血症を予防した経腸栄養管理について検討を行った.
【対象および方法】2018年4月~2021年11月に当院での胃瘻造設後1年以上の完全経管栄養管理された患者を対象とし,低Na血症(血清Na値135 mEq/L未満)と年齢,性別,Body Mass Index,Alb,食塩補給量(3 g未満/日),体重あたりの水分補給量(35 mL/kg以上),利尿剤内服の有無,脳卒中の既往有無,エネルギー補給量との関連を後方視的に検討した.
【結果】89例のうち18%に低Na血症が見られた.低Na血症に関わる因子として,1日あたりの食塩補給量3 g未満,水分補給量35 mL/kg以上であることが有意に関連していることが示された.
【結論】低Na血症予防のために,初回投与量の下限として1日あたり食塩補給量3 g以上のNa管理を行うとともに,年齢と体格を考慮した水分管理を行うことが重要である.
Purpose: The relationships of serum Na levels with patient characteristics and salt and fluid supplementation in enteral feeding were investigated to determine appropriate enteral nutritional management for prevention of hyponatremia.
Subjects and Methods: The subjects were patients managed with complete tube feeding for at least one year after gastrostomy in our hospital from April 2018 to November 2021. Associations of hyponatremia (serum Na <135 mEq/L) with age, gender, BMI, Alb, salt supplementation (<3 g/day), fluid replacement per body weight (>35 mL/kg), and diuretic medication, and those among age, sex, BMI, Alb, salt supplementation (<3 g/day), hydration per body weight (>35 mL/kg), diuretic use, previous stroke, and energy supplementation were examined retrospectively.
Results: Hyponatremia occurred in 18% of the 89 patients and was significantly related to daily salt supplementation of <3 g/day and hydration of >35 mL/kg.
Conclusion: To prevent hyponatremia, it is important to manage sodium with a minimum salt supplementation of 3 g per day as the lower limit of the initial dose, as well as to manage fluids while taking into account age and body size.
低Na血症は,一般的には血清Na濃度135 mEq/L未満とされ,臨床的にも最も目にする電解質異常であるが,重症度が軽度であっても,死亡リスクの増加と関連すると報告がある1,2).様々な誘因・原疾患が背景にあるが,病態以外としては食事でのNa摂取不足が指摘される.ただ,安定した栄養補給が図られている経腸栄養管理患者においても低Na血症を認める例は臨床的にも少なくない.日本人の食事摂取基準(2020年版)では,18歳以上の男女共通でNaの推定平均必要量を600 mg/日(食塩相当量1.5 g/日)としている3).経管栄養剤にはNaが含有されているため,基本的にはその基準以上の補給が図れるが,先行研究では経腸栄養管理患者の39.5%に低Na血症を認め,とくに1年以上の長期経腸栄養患者に発症していると報告している4).
また,日本人の食事摂取基準自体は健常人を対象とした基準であることや,Naの推定平均必要量は集団内の50%が必要量を満たせる摂取量であるため,不足のリスクが懸念される.Na量は通常の食事での欠乏リスクは低いと考えられ,生活習慣病の予防のための目標量(18歳以上成人男性:7 g未満,女性:6.5 g未満)や高血圧治療における制限(食塩摂取量6 g未満)など上限に対する目安は設けられているものの,各ガイドラインでも下限に対する基準は少なく,慢性腎臓病に対する食事療法基準で低Na血症予防として食塩摂取量3 g以上とされているのみである5).
先行研究でも統計的に経腸栄養患者を対象としてNa必要量を示した報告は見られないため,今回,経腸栄養症例を対象に,血清Na値と患者特性および食塩補給量と水分補給量との関連をみることで,低Na血症を予防した経腸栄養管理について検討を行ったので報告する.
2018年4月~2021年11月に当院での経皮内視鏡的胃瘻造設術(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy;以下,PEGと略)後,途中で経口栄養の併用や移行例を除き,当院での胃瘻カテーテル交換で追跡できた1年以上の完全経管栄養管理された患者89例(男:女 = 32:57例)を対象とし,後方視的に検討した.
2. 方法PEGから1年経過後の外来での胃瘻カテーテル交換時に,血液検査値および経腸栄養内容,処方内容を収集した.本研究では,血清Na 135以上145 mEq/L以下を血清Na値基準値内群(以下,基準値群と略),血清Na値135 mEq/L未満を低Na血症群(以下,低値群と略)とし,患者特性として,年齢,性別,Body Mass Index(以下,BMIと略),血清アルブミン(以下,Albと略),エネルギー補給量,食塩補給量(栄養剤含有の食塩相当量+薬剤として処方された塩化ナトリウム投与量),体重あたりの水分補給量,利尿剤内服の有無,PEG施行時の主病名(脳卒中の既往有無など)をカルテ情報より抽出した.
Na必要量の検討にあたり,慢性腎臓病に対する食事療法基準に示される食塩摂取量3 gをカットオフ値に設定した.水分補給量は,本集団の中央値(35 mL/kg)をカットオフ値として設定した.
統計解析は,低Na血症群の有無を目的変数とし,低Na血症に関わる因子として単変量解析を行い,次いで多変量解析を実施した.多変量解析に投入する独立変数は,全ての因子を含めて解析した.なお,統計解析ソフトはSPSS(ver. 28)を用い,有意水準はp < 0.05とした.
本研究は新潟厚生連上越総合病院倫理審査委員会の審査承認(受付番号No.253)を受けて行われた.
3. 研究デザイン単施設,後ろ向き観察研究である.
患者特性について,中央値(範囲または割合)を示す(表1).年齢82.0(73–87)歳,男性32例(36.0%),女性57例(64.0%),BMI 17.9(16.0–19.1)kg/m2,Alb 3.3(3.0–3.6)g/dL,Na 139(137–142)mEq/L,エネルギー補給量900(900–1,200)kcal,食塩補給量6.7(4.5–8.3)g,水分補給量35(30–40)m/L/kg,利尿剤の内服あり14例(15.7%),PEG施行時の主病名は,脳卒中が47例(52.8%),認知症やALSなどその他疾患が42例(47.2%)であった.
| 項目 | 全体n = 89 | 低値群n = 16 | 基準群n = 73 |
|---|---|---|---|
| 年齢(歳) | 82(73–87) | 83(79–86) | 82(73–87) |
| 75歳(以上:未満) | 63:26 | 15:1 | 48:25 |
| 性別(男:女) | 32:57 | 5:11 | 27:46 |
| BMI(kg/m2) | 17.9(16.0–19.1) | 17.2(14.8–20.8) | 17.9(16.0–18.9) |
| Alb(g/dL) | 3.3(3.0–3.6) | 3.2(3.0–3.3) | 3.4(3.1–3.6) |
| Na(mEq/L) | 139(137–142) | 132(132–133) | 140(138–142) |
| エネルギー補給量(kcal) | 900(900–1,200) | 900(900–1,000) | 900(900–1,200) |
| 食塩補給量(g) | 6.7(4.5–8.3) | 5.5(2.8–8.1) | 6.8(5.2–8.3) |
| 食塩補給量(3 g以上:未満) | 80:9 | 12:4 | 68:5 |
| 体重あたり水分補給量(mL/kg) | 35(30–40) | 37(29–43) | 35(30–39) |
| 水分補給量(35 mL/kg以上:未満) | 48:41 | 12:4 | 36:37 |
| 利尿剤使用の割合(有:無) | 14:75 | 5:11 | 9:64 |
| PEG施行時の入院病名 | |||
| 脳卒中(脳梗塞/脳出血/くも膜下出血) | 47 | 8 | 39 |
| その他(認知症,神経難病(PD/ALS等),慢性硬膜下血種) | 42 | 8 | 34 |
数値は患者数または中央値(範囲)を示す
PD:パーキンソン病
ALS:筋萎縮性側索硬化症
低Na血症(低値群)は,全89例中16例(18.0%)であり,Na値132(132–133)mEq/Lであった.低値群の食塩補給量は,5.5(2.8–8.1)gと基準群の6.8(5.2–8.3)gに比し,少なかった.
低Na血症に関わる各因子について,単変量解析では,食塩補給量3 g未満(p = 0.041)で有意な差が見られ,水分補給量35 m/L/kg以上(p = 0.071),利尿剤の内服あり(p = 0.069)で有意差はなかったものの低Na血症と関連する傾向がみられた(表2).
| 説明変数 | 単変量解析 | 多変量解析 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| オッズ比 | 95%信頼区間 | p | オッズ比 | 95%信頼区間 | p | |
| 年齢 | 1.016 | 0.961–1.075 | 0.566 | 1.030 | 0.949–1.117 | 0.481 |
| BMI(kg/m2) | 0.957 | 0.780–1.174 | 0.673 | 0.981 | 0.782–1.230 | 0.868 |
| Alb(g/dL) | 0.562 | 0.179–1.770 | 0.325 | 0.609 | 0.115–3.231 | 0.560 |
| 性別(男) | 1.291 | 0.405–4.115 | 0.666 | 0.575 | 0.120–2.760 | 0.489 |
| 利尿剤の内服あり | 3.232 | 0.911–11.471 | 0.069 | 3.432 | 0.676–17.419 | 0.137 |
| 脳卒中の既往あり | 1.147 | 0.389–3.386 | 0.804 | 0.787 | 0.200–3.095 | 0.731 |
| エネルギー補給量(kcal) | 0.999 | 0.996–1.002 | 0.367 | 0.998 | 0.994–1.003 | 0.452 |
| 食塩補給量3 g未満 | 0.221 | 0.052–0.941 | 0.041 | 0.145 | 0.022–0.948 | 0.044 |
| 水分補給量35 mL/kg以上 | 3.083 | 0.909–10.455 | 0.071 | 7.460 | 1.392–39.981 | 0.019 |
多変量解析では,食塩補給量3 g未満(p = 0.044,オッズ比:0.145,95%信頼区間0.022–0.948),水分補給量35 m/L/kg以上(p = 0.019,オッズ比:7.460,95%信頼区間1.392–39.981)で有意な差が見られ,低Na血症との独立した関連因子であった.単変量で関連が示唆された利尿剤の内服あり(p = 0.137,オッズ比:3.432,95%信頼区間0.676–17.419)と関連は見られなかった.
当院における胃瘻造設から1年以上の完全経腸栄養管理であった患者89例のうち18%に低Na血症が見られた.そして,1日あたりの食塩補給量3 g未満,水分補給量35 m/L/kg以上であることが低Na血症に有意に関連していることが示された.
Naの必要量について,日本人の食事摂取基準でのNa推定平均必要量は600 mg/日(食塩相当1.5 g/日)は,先述したとおり健常人を対象としたものであることや不足または欠乏のリスクが懸念されることから,経腸栄養症例を対象とした基準の検討が必要である.
今回,低Na血症への影響として,食塩補給量3 g未満/日が独立した因子として関連が見られた.食塩補給量3 g未満の44.4%(9例中4例)で低Na血症が生じ,食塩補給量3 g以上での低Na血症15.0%(80例中12例)に比し高い割合であった.食塩補給量が3 g未満と極端に少ない補給状況においては,血清Na値の低下が生じやすく,経腸栄養管理における低Na血症予防として,最低でも1日あたり食塩補給量3 g以上が必要であると考える.
臨床現場では,減塩の観点から塩分6 g未満といった制限が意識されていることが多いが,慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版でも記載があるように,低Na血症の頻度は高Na血症より高く,低Na血症での総死亡リスクが増加すると報告されている6).さらに先述した先行研究でも,重症度が軽度であっても,死亡リスクの増加と関連するとの報告があり1,2),経腸栄養管理においても,低Na血症予防として1日あたりの食塩補給量3 g未満となる管理は避けるべきと考える.
また,1日の水分補給量35 mL/kg以上が低Na血症と独立した関連因子であり,水分補給量が多いことが,低Na血症に関連すると考えられる.水分を多量に摂取することによって「希釈性低ナトリウム血症」が生じる.水の多量補給による低Na血症は,腎臓の処理能をはるかに超える量の水の摂取によって,低浸透圧・低Na血症を呈する水中毒がある7).しかし,これは1日に8 L以上の多量の補給であり8),通常の栄養管理では生じにくい.水分補給量の目安として,静脈栄養経腸ガイドライン第3版では「体重当たり30~40 m/L/日を基準とし,病態に応じて増減する(AIII)」とされており9),1日の水分補給量35 mL/kgは,決して多すぎる量ではない.ただ,年齢別必要水分量の目安は,25~54歳:35 mL/kg/日,55~64歳:30 mL/kg/日,65歳以上:25 mL/kg/日となっており10),本研究の対象集団の年齢は82歳,低値群でも83歳であり高齢集団であったことから,年齢を考慮した日常的な水分補給量では多い状態であったと考える.
高齢者の経腸栄養患者とした報告では,低Na血症の発生率は1年以上の長期経腸栄養患者や高齢者,特に年齢が上がるにつれて低Na血症の割合が高まる傾向がある報告されている11).高齢者の低Na血症については,抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(Syndrome of Inappropriate Secretion of Antidiuretic Hormone;以下,SIADHと略)との関連が報告されており,高齢者の老化に関連した軽度SIADH状態による慢性・特発性の低Na血症への影響や加齢に伴う腎機能の低下,水電解質に関連するホルモンの異常など,SIADH準備状態での経腸栄養管理によるNa摂取制限が低Na血症を顕在化すると指摘されている12,13).SIADH治療の基本は原疾患の治療以外として,①水制限,②塩分投与である14).本研究の対象は中央値82歳の高齢集団であり,経腸栄養管理における長期の食塩補給量3 g未満でのNa制限状態や1日の水分補給量35 m/L/kgにより,低Na血症の顕在化した影響を考える.
SIADHをきたす疾患として脳卒中や頭部外傷などの中枢神経系疾患がある.PEG施行例としても脳卒中症例は多く,本研究でも52.8%が脳卒中症例であったが,低Na血症との関連は見られなかった.SIADHの病因を検討した研究では,中枢神経系疾患の割合は7.2%と特発性の15.9%の約半分と頻度は低く,他病因のSIADHよりも重篤で高張生理食塩水の治療を要する例が多かったと報告されている15).今回,血清Na値120 mEq/L以下の重度な低Na血症例はおらず,1年以上の長期療養を図れている症例という点からも,中枢神経系疾患の影響は低いと考える.
静脈栄養経腸ガイドライン第3版では,経腸栄養の長期投与の際には低Na血症をきたしやすいので,血清電解質濃度を定期的にモニタリングする必要性,Na投与量の把握,経腸栄養剤の食塩相当量を計算したNaCl追加投与が言及されている9).経腸栄養管理は,通常の食事に比べ,経腸栄養剤に含まれるNa量が少なく,また食事と異なり,日常的な変動が少なく同内容の栄養補給が長期に続くことで,水分補給を含めて,わずかな過不足の影響が,特に高齢者において顕在化しやすいと考える.経腸栄養患者は臨床的症状を訴えにくい例も多いことから,食塩補給量は制限だけでなく,低Na血症予防のために食塩補給量の不足にも注意し,年齢と体格を考慮した水分管理を行うことが重要である.
さらに,低値群のうち3 g以上の食塩補給量であっても低Na血症となる症例も存在することから,本来であれば一時的な評価ではなく,定期的評価による補給量の見直しが望ましい.適正な補給量の立証は今後の課題であるが,本研究の成果により,先の水分補給量の影響も考慮した上で,3 gをあくまで初回投与量の下限の設定値として捉え,それ以上の食塩補給を行うことで,個々の適正補給量の管理に役立つと考える.
本研究のリミテーションは,単施設後ろ向き研究であること,すでに食塩補充がされている症例が多く,先行研究と比しても,低Na血症の割合が少なかったことである4,12).1年以上の療養を得られ,定期の胃瘻カテーテル交換が実施できている患者が対象であり,全身状態は安定していたと考えるが,低Na血症の関連が指摘される疾患(心不全,腎不全などの臓器不全),副腎・下垂体・甲状腺機能異常といった内分泌疾患などが,胃瘻カテーテル交換時のカルテ情報だけでは拾い上げが困難であり検討できなかったこと,SIADHの鑑別や血糖値によるNa値の補正がされていないことである.
本研究では1年以上の長期経腸栄養管理において,食塩補給量や水分補給量,どのような患者特性が低Na血症をきたしやすいかを検討し,経腸栄養投与での過剰な水分と食塩補給量の不足が低Na血症のリスク因子となりえることが示された.
経腸栄養患者は臨床的症状を訴えにくい例も多いことから,食塩補給量は制限だけでなく,低Na血症予防のために食塩補給量の不足にも注意し,初回投与量の下限として,1日あたり食塩補給量3 g以上のNa管理を行うとともに,過剰な水分補給を避け,年齢と体格に応じた水分管理を行うことが重要である.
本論文に関する著者の利益相反なし