2026 年 8 巻 1 号 p. 15-19
令和6年度診療報酬改定により「リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算(連携体制加算)」が新設された.制度の趣旨から脳血管疾患患者を主対象とし,脳外科病棟で算定を開始した.医師・看護師・療法士・管理栄養士に加え院内システム担当者とも協働し,評価・計画様式を電子カルテ内にテンプレート化し,院内モバイルを活用し算定患者情報の共有や入院48時間以内の評価完遂体制を整備した.その結果,1年間で904名・5,424件を算定した.Barthel Index低下率1.5%,褥瘡発生率0.8%と施設基準のアウトカム要件を満たしており,連携体制加算は脳外科病棟においても算定可能であることが示唆された.加えて,連携体制加算の運用は収益確保の一助となることも示された.
我が国では令和6年度診療報酬改定により急性期入院患者の日常生活動作(Activities of Daily Living:以下,ADLと略)維持・向上と早期の経口摂取再開を目的に「リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算(連携体制加算)」が新設された1).
脳血管疾患患者は簡易スクリーニング法を用いた場合で37%~45%,機器検査を用いた場合では64%~78%の患者で嚥下障害を合併し,嚥下障害の合併はADLの低下にも関連している2).したがって,嚥下障害リスクの高い脳血管疾患患者を主対象とすべきであると判断し,脳外科病棟で令和6年7月より算定を開始した.
今回,1年間の連携体制加算の運用実績および成果を報告する.
当院はIntensive Care Unit,High Care Unitを含む230床の急性期病院である.脳神経外科,循環器内科,外科,血液内科など18の診療科からなり,超急性期脳卒中加算,栄養サポートチーム加算など各種加算を算定し,脳神経外科,整形外科,血液内科など複数の診療科でクリニカルパスを導入している.歯科は併設なく,口腔に関するフォローが必要な際は当院かかりつけリストに登録されている歯科医師に往診を依頼しており,年間約20件の往診を受けている.
リハビリテーションスタッフは20名(理学療法士13名,作業療法士3名,言語聴覚士4名)在籍し,2014年より365日リハビリテーションを開始している.管理栄養士は7名在籍し,週5回のミールラウンドを実施している.栄養関連の多職種チーム医療としては栄養サポートチーム(Nutrition Support Team;以下,NSTと略)加算を2010年より算定している.
連携体制加算は,当該病棟に入棟した患者全員に対し,原則入棟後48時間以内にADL,栄養状態,口腔状態についてBarthel Index(以下,BIと略)やGlobal Leadership Initiative on Malnutrition(以下,GLIMと略)基準に基づく計画を作成し,入棟後早期にリハビリテーション等を実施した場合,計画作成日から14日間を上限に1日120点を算定できる.算定要件には,評価表の作成や定期的なカンファレンスの開催,施設基準には専従の理学療法士と専任の常勤の管理栄養士の配置,プロセスアウトカムとして入棟後3日までのリハビリテーション料の算定割合,土日祝日におけるリハビリテーション提供単位数,退院または転棟時におけるADL低下率,褥瘡発生率が設けられている1).
2. 当院での運用制度の趣旨から嚥下障害リスクが高く早期介入の意義が大きい脳血管疾患患者を主対象とするべきであると判断し,脳外科病棟での算定を決定した.
算定開始に先立ち,人員配置体制の整備,評価プロセスの構築,院内システム担当者と協働し,連携体制加算の厚生労働省通知に定める評価様式(厚生労働省の通知様式7-2/7-4に相当)に準拠した評価用紙を電子カルテに構造化入力フォームとしてテンプレート化した.
令和6年6月に算定体制が整備され,同年7月より脳神経外科病棟(32床)で算定を開始した.運用は,医師が診断,口腔・栄養評価およびリハビリテーション処方箋を発行,看護師がEilers Oral Assessment Guideを用いた口腔機能評価,リハビリテーション専門職がBarthel Index評価,管理栄養士がGLIM基準を用いた栄養状態の評価を実施し,また,対面で入院前の食生活や食物アレルギー等も確認した.
評価漏れ防止と入棟後48時間以内の評価実施の徹底に向け,院内モバイル端末のグループチャット機能を活用した運用を併用した.看護師が当日の入院患者情報をチャット内に即時共有し,各職種が評価・入力完了の返信にて進捗の可視化と不備の早期是正を図っている.また,定期的に病棟カンファレンスを多職種で実施し,全入院患者を対象にADLや食事形態の方針を協議している.
1年間で全904名(表1),5,424件(650,880点)の算定ができた(図1).歯科医師への往診依頼をした患者はいなかった.
| 項目 | n = 904 |
|---|---|
| 年齢,歳 | |
| 男性 | 75.2 ± 14.7 |
| 女性 | 77.2 ± 14.2 |
| 性別(男性/女性),n | 456/448 |
| 身長,cm | |
| 男性 | 163.5 ± 14.8 |
| 女性 | 150.0 ± 14.0 |
| 体重,kg | |
| 男性 | 57.3 ± 13.6 |
| 女性 | 47.4 ± 12.2 |
| Body Mass Index,kg/m2 | |
| 男性 | 21.2 ± 4.3 |
| 女性 | 20.8 ± 4.7 |
| 疾患内訳,n(%) | |
| 脳血管疾患 | 552(61.1) |
| 消化器疾患 | 194(21.4) |
| 呼吸器疾患 | 101(11.2) |
| その他 | 57(6.3) |
| 入院時Eilers Oral Assessment Guide | 9[8–10] |
| 入院時GLIM基準,n(%) | |
| 低栄養非該当 | 800(88.5) |
| 中等度栄養障害 | 18(2.0) |
| 重度栄養障害 | 86(9.5) |
| 在棟日数 | 10 ± 1 |
連続変数:平均値 ± 標準偏差,あるいは中央値(25–75%四分位)
カテゴリーデータ:人数(%)
GLIM;Global Leadership Initiative on Malnutrition

全算定患者のうち494名でリハビリテーション処方があり,434名(87.9%)が入棟3日以内に疾患別リハビリテーション料が算定できた.
(イ) 平日の提供単位数に対する土日祝日における1日あたりの疾患別リハビリテーション料の提供単位数算定患者への平日に対する土日祝日のリハビリテーション実施単位数の割合は110%であった.
(ウ) 退院または転棟した患者のうち,退院または転棟時におけるADLが入院時と比較して低下した患者の割合対象者904名の入院時BI(中央値[25%–75%])は50[5–85]点,退院時BIは75[10–95]点であった.Barthel Indexが改善したのは527名(58.3%)で,変化なしは363名(40.2%),低下は14名(1.5%)であった.
脳血管疾患552名では,入院時BIは50[5–80]点,退院時BIは75[15–95]点であった.BIが改善したのは342名(62.0%)で,変化なしは200名(36.2%),低下は10名(1.8%)であった(図2).

グラフ内の数値は人数(名)を示す.退院時にBarthel Indexが低下した割合は,脳血管疾患で1.8%,消化器疾患で0%,呼吸器疾患で3.0%,その他で1.8%だった.
算定患者の褥瘡発生率は0.8%であった.
3. 入院中の栄養摂取経路の変化入院時経口摂取は421名(46.6%),一部経口摂取5名(0.6%),経管栄養57名(6.3%),絶食421名(46.6%)であった.入院時経管栄養もしくは絶食であった478名のうち285名(57.5%)が経口摂取を獲得した.
疾患別の入退院時の栄養摂取経路を図3に示す.脳血管疾患では,入院時経口摂取297名(53.8%),一部経口摂取5名(0.9%),経管栄養43名(7.8%),絶食207名(37.5%)であり,退院時は経口摂取426名(77.2%),一部経口摂取25名(4.5%),経管栄養72名(13.0%),絶食29名(5.3%)であった.

グラフ内の数値は人数(名)を示す.各疾患ともに退院時は入院時に比べ経口摂取の割合が増加していた.
算定患者の約60%は自宅退院もしくは施設退院であり,約16%は回復期リハビリテーション病棟へ転院していた.
5. リハビリテーションを実施した脳血管疾患患者における連携体制加算の算定前後のADLおよび栄養状態の比較連携体制加算算定前1年間で脳血管疾患リハビリテーションを実施した患者は305名,本報告期間内に脳血管疾患リハビリテーションを実施した患者は322名であった.
算定開始前のFunctional Independence Measure(以下,FIMと略)は入院時39[22–71]点,退院時71[31–106]点であり,算定開始後のFIMは入院時36[21–65]点,退院時59[24–98]点であった.算定開始前のGeriatric Nutritional Risk Index(以下,GNRIと略)による栄養評価は入院時104 ± 7,退院時92 ± 10であり,算定開始後のGNRIによる栄養評価は入院時96 ± 13,退院時86 ± 38であった.
急性期病院の脳外科病棟において連携体制加算を1年間算定した結果,904名5,424件算定できた.入棟後3日内のリハビリテーション介入率,BI低下率,土日祝日のリハビリテーション実施割合,褥瘡発生率も施設基準を満たしており,脳外科病棟での算定も実現可能であることが示唆された.
脳血管疾患患者は身体・感覚障害,嚥下障害など多様な症状を呈しADL低下や低栄養の一因となり,嚥下リハビリテーションを含む早期リハビリテーションの有用性はガイドラインでも示されている3,4).また,入院中のリハビリテーション・栄養・口腔の三位一体の介入は握力や骨格筋量を向上させる報告5)もあり,サルコペニアの予防にも寄与する可能性がある.連携体制加算は多職種介入の確実性かつ再現性が制度上保証されている強みがあり,先行研究の知見と臨床を結びつけるツールとして有用かもしれない.
今後の課題としては,まずは全国的に算定率が低いことがある.専従・専任職員の配置,365日体制のリハビリテーション実施かつ土日祝日のリハビリテーション提供量の充実といった施設基準を満たすことが困難であり算定率は9%に留まっている6).当院では幸い施設基準を満たすことができたものの運用を開始すると,連休時のリハ処方遅延に伴う入棟3日以内のリハビリテーション介入の未達,夜間入院患者における評価表初期入力の記載遅延を認めた.加えて連携体制加算とNST加算は併算定不可という診療報酬上の規定もあり,NSTとの役割分担も議論が必要であった.また,施設基準に適切なリハビリテーション,栄養管理,口腔管理に係る研修を修了している常勤医師が1名以上勤務していることが含まれているが,該当する研修が日本リハビリテーション医学会主催の「急性期病棟におけるリハビリテーション診療,栄養管理,口腔管理に係る医師研修会」のみと選択肢が限られており,受講機会の確保が導入上の課題となり得ているかもしれない.これらの課題の解決に向け,院内の運用ルールや計画的な研修体制の確立が必要である.
1年間の運用を通して挙げられた,連休時のリハビリテーション処方発行遅延による72時間以内介入困難,夜間入院患者の評価入力遅延,NST加算との併算定不可についての課題を解決すべく,当直医への周知徹底やクリニカルパスに評価項目を導入することで介入および評価漏れの減少が期待される.NSTとの役割整理に関しては,両チームの患者リストを統合し,電子カルテ上で加算状況を視覚的に明確化することで,必要患者に「お互いが対応している」といった思い込みによる介入漏れを予防することが重要である.これらの改善策の実践にて,より安定した連携体制加算の運用が期待される.
また,脳外科病棟でリハビリテーションを実施した患者の約16%が回復期リハビリテーション病棟へ転院していた.回復期リハビリテーション病棟入院患者において口腔・栄養状態は退院時ADLの予測因子であり7),回復期リハビリテーション病棟が急性期病院から求める情報と連携体制加算で評価される内容は概ね一致している.したがって,連携体制加算で得られた評価情報を回復期リハビリテーション病棟に提供することはシームレスな医療連携の基盤となり,回復期リハビリテーション病棟転院患者の退院時ADL向上に寄与する可能性が考えられる.
今回の報告は「施設近況報告」としての位置づけから,連携体制加算導入前後におけるADL・栄養・口腔状態の詳細な統計解析は行っていない.しかしながら,連携体制加算導入の効果をより厳密に検証するうえで算定前後の患者アウトカムの変化を比較することは重要であり,今後はさらなる解析が必要であると考える.
令和6年度に新設された連携体制加算を脳外科病棟で運用し,算定要件や施設基準を満たすことが確認され,脳外科病棟においても算定可能であることが示唆された.
本論文に関する著者の利益相反なし