大阪国際がんセンター
2. 研修期間2025年10月20日~10月24日
この度,2025年度国内施設研修支援制度により,2025年10月20日~10月24日の5日間,大阪国際がんセンターにて国内施設研修を受けてまいりました.
私は現在,消化器外科病棟において栄養サポートチーム(Nutrition Support Team;以下,NSTと略)専任の管理栄養士として,がん治療を受ける患者の栄養管理に携わっています.日々の業務の中で,患者ごとに栄養不良となる背景や必要となる栄養支援が異なることから,それぞれに応じた栄養管理の難しさと個別性に配慮したチーム介入が不可欠であることを実感しています.今回の研修では,がん患者の治療全体を見据えた栄養治療のあり方や,より実践的なアプローチについて理解を深めることを目的に臨みました.
実際の研修では,週3回実施されているNST回診カンファレンスに加え,High Care Unit(以下,HCUと略),Intensive Care Unit(以下,ICUと略)の各カンファレンスに参加し,さらに入院および外来における栄養管理の実際について見学させていただきました.
大阪国際がんセンターの栄養管理部門では,NST専従管理栄養士,専任管理栄養士,さらにHCU・ICU専任管理栄養士が連携し,年間6,000件を超えるNST介入を実施していました.平均在院日数が7日と短い同センターでは,入院直後から低栄養リスクを迅速に捉え,適切なNST介入の判断をすることが求められていました.病棟看護師が入院当日に栄養状態に関するリスクを評価しNST介入の依頼を行い,その後,NST専任管理栄養士が入院当日または翌日に再度評価をし,患者の抽出を行っていました.そのため入院当日や翌日からNST回診対象となる患者が少なくありませんでした.「評価はゴールではなくスタートである」という言葉が印象的であり,患者背景や治療内容,これまでの治療歴等を踏まえて低栄養リスクを早期に見極め,低栄養に陥らせない・悪化させないために,迅速で的確な栄養管理を行うことの重要性を改めて実感いたしました.一方で当院では短期入院予定の患者や入院時に低栄養ではないと判断された患者ではNST介入が見送られたり,遅れたりする場合があるため,今回の学びを踏まえ,介入の在り方について意識を改めていきたいと感じました.
実際に参加したNSTやHCU,ICUのカンファレンスでは,栄養が体内でどのように代謝され利用されるのか,どの栄養素をどのタイミングで投与すべきかを検討する重要性を改めて学びました.こうした視点を欠いた栄養管理は,患者に不利益が生じてしまう可能性があります.そのため患者の病態や治療内容を把握し,検査値から電解質異常や栄養状態などを評価したうえで,使用中の輸液や薬剤を考慮した栄養管理が提案されていました.またそれらを多職種間で共有し,意見を交わしながら議論を重ね,カンファレンスの内容を主治医や病棟看護師へ確実に伝達していく姿から,チームとしての栄養管理が組織として根付いていることを実感しました.
外来および入院患者への関わりにおいては,疾患別に担当管理栄養士が配置され,栄養指導や聞き取りを行い,入院から外来に至るまで一貫して担当する体制が整えられていました.がん治療中には化学療法や放射線療法による有害事象,手術後の影響などにより食事量が低下する患者が多くみられますが,そうした患者に対してにおいに配慮された食器や選択肢のある豊富なメニューを提供することで患者にきめ細やかな栄養支援をされていました.例えば,味覚異常がある患者に対しては病院給食を通じてどのような料理や味付けであれば食べやすいのかを一緒に探ることで,退院後の食事のヒントとなり,退院後も患者が食事内容を自ら選択できる力を身につけることにつながります.また,食事摂取や体重の目安,受診すべきタイミング等を患者と具体的に共有し,適切な時期に支援へつなげられるよう教育されていたことが印象的でした.食べられない理由や背景を丁寧にアセスメントし,対応方法を整理・言語化しながら,患者が実践可能な栄養支援を提案していくことが重要だと再認識しました.
今回の研修で得た治療全体を見据えた継続的な栄養支援の視点や患者教育の方法等を自施設でも共有し,支援体制のさらなる質向上につなげていきたいと考えています.
最後に,このような貴重な機会を与えてくださった日本栄養治療学会の皆様,また,ご多忙の中,研修を受け入れ温かくご指導くださいました飯島正平先生,松岡美緒先生をはじめ栄養管理部門およびNSTの皆様に心より感謝申し上げます.今回の研修で得た学びを今後の実践に確実に生かし,患者の栄養状態の改善に一層貢献できるよう精進してまいります.