学会誌JSPEN
Online ISSN : 2434-4966
報告記
2025年度国内施設研修支援制度報告記
竹石 志保
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2026 年 8 巻 1 号 p. 45-46

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 研修概要

1. 研修施設名

大阪国際がんセンター

2. 研修期間

2025年11月10日~11月14日

 報告

自施設でのNutrition Support Team(以下,NSTと略)活動において日々気になることや困っていることがあっても,他施設の状況を直接見学したり教えを乞うたりできる機会は限られているものではないでしょうか.

今回私は,JSPENをはじめ日本の栄養治療分野でも幅広くご活躍されておられる飯島正平先生(栄養腫瘍科 主任部長)率いられる大阪国際がんセンターのNSTで5日間研修させていただきました.当センターは大阪城のすぐ西側に面し,国や大阪府の主要機関が集まる官庁街にあります.関西だけでなく,西日本~九州・沖縄をはじめ,離島地域からも受診されるがん患者さんを広く先進的に診療されています.本研修期間中は飯島先生と栄養管理部門総括主査である管理栄養士の松岡美緒氏に毎日とても手厚い指導を賜りましたのでその内容をご報告いたします.

NSTの朝は早く,8時のIntensive Care Unitカンファレンスへの出席から一日が始まります.カンファレンスが終わるとその足で栄養治療介入を要する患者さんのベッド脇へ赴き,モニタ,カルテ,ドレーン廃液や投与されている栄養(経腸・経静脈)の状況等を直接確認し,その時点での最善策について考察されます.カンファレンスには担当医師・看護師の他,関連スタッフも多数出席されるため,病状変化が激しい患者さんの最新の治療方針についてリアルタイムの治療介入が日々当たり前に実現します.さらに介入後は全身状態や検査結果がどのように変化するのか等,多いときは1日3回患者さんのベッドサイドへ足を運んで確認し,必要があれば適宜状況に応じた方針を立てなおします.治療に難渋する患者さんの担当医師・看護師が通りすがりの飯島先生や松岡氏に直接声をかけ質問されていた姿もたびたび拝見しました.

カンファレンスが終了すると飯島先生や松岡氏からマンツーマンで臨床栄養について講義いただきました.研修生によってニーズが異なるという理由で当センターでは1期間1名ずつの研修生受け入れでしたので,日々の診療で疑問に思っていることや気になることは遠慮なく相談・質問させていただく大変貴重で贅沢な時間でした.講義ではNSTの実践的な内容はもちろん,病態生理や輸液製剤の基本,電解質異常の背景など臨床現場で欠かせない知識を網羅的に教えていただき大変勉強になりました.自身の知識整理が不十分な点も洗い出され,基本に立ち返って勉強しなければと反省もしました.

普段薬剤師が直接関わることのない病院食メニューもたくさん紹介いただきました.一般的に病院で提供されるメニュー以外にも,軽食の「サンドイッチ」「彩りそうめん」や,いわゆる“病院食”の概念をいい意味で裏切る「ホットドッグ」「お好み焼き」「ソースカツどん」「醤油ラーメン」そして大阪のsoul foodである「たこ焼き」などもラインナップがあり,摂食嚥下機能や食欲が低下した多種多様のがん種・治療歴の患者さんがどうやったら食事を摂れるようになるか多方面から様々な工夫がされていました.もちろんメニューの準備だけでは患者さんに届かないわけですが,ここは管理栄養士さんが病室に赴いて徹底的な聞き取りをされ,あらゆる背景に寄り添った教育・提案をされます.栄養管理室には病棟看護師さんから食事の聞き取り依頼の電話が度々かかってきました.“安定して栄養を摂取する”ことを入院中のみの目標にとどめず,退院後も困らない体制を入院中に整え,患者さん(もしくは家族・保護者など)に教育するのです.

私は今まで「NSTの介入」というと栄養状態が悪い患者さんを対象にするイメージでしたが,当センターでは入院された全患者さんの情報をあらかじめNSTが把握し,その後の経過を予見して先手を打って介入されます.そのため入院時には栄養状態に問題のない患者さんもNST介入対象として挙がり,一度の回診対象者は30~60名,週3回で合計150名前後の患者さんの栄養状態を評価・介入します.回診前にはNST専従・専任の管理栄養士さん2名が数時間で「現病,治療内容(抗がん剤や手術の術式も含む),栄養・電解質に影響する薬剤の使用の有無,自宅での栄養管理状況や退院後のフォロー」などを漏れなく網羅的に情報収集し,カンファレンス内の限られた時間内で効率的にプレゼンされます.飯島先生とNSTメンバーで情報共有し戦略を立てた後は,各病棟に赴き必要な介入事項を医師・看護師に直接伝えます.

当センターでは抗がん剤や放射線治療で入退院や外来通院を繰り返される患者さんも多く,定期的に管理栄養士さんによる栄養指導やNST介入が実施されており「点ではなく線」で患者さんの栄養状態を確認されています.栄養管理室へ外来栄養指導に訪れた患者さんが「ただいま~」と言って入室されていたのが大変印象的でした.

「食べること,腸を使うこと」を大前提に患者さん一人一人の病状や生活環境に寄り添い,熱量以外の電解質・血糖などの検査値ですら“数字合わせ”の道具として使わず,その背景として生体内でどのようなことが起きているのか見えない部分を医学的・科学的に検証すること―バックグラウンドの知識を否応なしに求められるレベルの高い栄養介入の一連でした.

JSPENの国内施設研修制度はまだ産声を上げたばかりであり,自施設の日常業務を5日間も離れて他施設に赴くというのはいろいろな面でハードルもあると思いますが,その分自施設に持ち帰るものは決して小さくありません.

NST専門療法士取得前の実地修練とはまた全く異なり,NST業務を実践した立場からの視点・視野で他施設の教えを学べる大変貴重なチャンスです.日ごろの栄養治療に悩まれている方もそうでない方もぜひ,参加をご検討されてはいかがでしょうか.

この度は大変貴重な制度に採択いただいたこと,大阪国際がんセンターのNSTに関わる先生方とのご縁をいただいたこと,併せて感謝申し上げます.

 

掲載している写真は,被写体となった方から掲載への同意を得ています.

写真1. 早朝の大阪城公園から臨んだ大阪国際がんセンター(正面)
写真2. お世話になった飯島先生(左),松岡氏(右)と筆者(中央)
 
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