抄録
液晶物質の機能化は、機能性をもつ液晶性有機半導体の開発につながる.私達はこの観点から、強誘電性液晶、つまり、強誘電性を持つ液晶性有機半導体の基礎的な電気特性について調べた。モデル物質として、SmC相を示す有機半導体である,’-dioctylterthiphene (8-TTP-8)に強誘電性液晶のFLC120(Chisso Corporation, optically active 2-biphenyl prymidine derivative)を4mol%添加し、強誘電相を誘起し実験に用いた。この物質の自発分極は4(nC/cm2)で、smC*相における移動度は10-4(cm2/Vsec)程度ある。さらに、バルクと電極界面の物性に注目し、2.2μmのセルと9μmのセルにおける電流電圧特性の比較から、螺旋構造の解けた強誘電相ではホール注入促進を確認した。これはバルク内のダイポールが一様にそろうことでバルク内の電場を緩和し、バルク‐電極界面局所的による電荷注入の促進によるものと考えられた。