2009 年 2 巻 p. 222-228
論者は1988年に「ひな形(照合)方式」という音韻論の枠組を提唱し、以来この枠組に依拠しながら音韻研究を行ってきている。この枠組の基本精神は音韻階層構造の全レベルに対して適用可能であると想定されるが、理論の裏づけはこれまで主として音節レベルに実質的に限定してきた。本発表では、音節以外のレベルにおけるひな形方式の理論的検証という課題を設定し、その一端に取り組む。こうしたレベルには、音節以外の音韻階層構造のレベルの他に、形態・統語構造、意味構造、談話・情報構造、等が原理的には含まれると考えられるが、こうしたレベルに対して、ひな形方式の基本精神がどの程度まで適用可能であるのか考察する。併せて、得られた知見の言語教育への応用という側面も検討する。