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量子計算と量子コンピュータ
西野 哲朗
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2003 年 2003 巻 Spring-Meeting 号 p. 50-54

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抄録

1985年に David Deutsch は, 量子並列計算を実行できる Turing 機械として, 量子 Turing 機械 (QTMと略す) を導入した. そして, 1994年に Peter Shor が, QTMは任意に小さな誤り確率で, 整数を多項式時間内に因数分解できることを示した. 決定性 Turing 機械は, 整数を多項式時間内には因数分解できないと広く信じられているので, QTMは本質的に新しい計算モデルである可能性が高い. 一方, 多くの研究者が, QTMに基づく量子コンピュータを物理的に実現する方法について研究を進めている.なかでもNMR (核磁気共鳴) は, いくつかの理由から, 量子コンピュータの実現方法として有望と考えられている. しかし, NMR上で実行される量子計算は, QTM上で実行される量子計算とは若干異なっている. 例えば, Shor の因数分解アルゴリズムは, そのままではNMR量子コンピュータ上では実行できない. 本論では, 最初にNMR量子計算のモデルとして, Bulk 量子 Turing 機械 (BQTMと略す) を定義する. そして, BQTMはNP完全問題のある種のインスタンスを効率良く解くことができ, また, 整数を多項式時間内に因数分解できることも指摘する.

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