抄録
暗号は数千年の歴史を持つが, 暗号理論が多くの研究者によって公開された形で研究され始めたのは, ほんの数十年前に過ぎない. それにもかかわらず, 暗号理論はこの数十年間でその理論的基礎付けを確立し, また多くの実用的応用を見い出すなど, 近年最も成功した研究分野の一つである. 本稿では, そのような暗号理論の分野において, ここ数年間特に注目を集めている以下の2つの話題について紹介する. 最初に, いままでの暗号の安全性証明理論を集大成するような体系として2001年に Canetti によって提案されて以来大きく進展している Universal Composability (汎用的結合可能性) の理論について紹介する. その後, 様々な新しい暗号応用機能を実現する方法論として最近脚光を浴びている楕円曲線上の双線形写像を用いた暗号方式について紹介する.