日本内分泌学会雑誌
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Chlormadinone acetateの生物学的活性 (III)
ラット性機能に及ぼす出生前投与の影響
小林 文彦三宅 有
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1966 年 42 巻 2 号 p. 140-144,110

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抄録

合成黄体ホルモン剤であるchlormadinone acetate (GMA) をwistar系妊娠ラットの妊娠後期に1日8mg連続7日間経口投与し, 出生仔肛門一外性器間距離 (AGD), 性成熟, 交尾能などに対する影響をnorethisterone (NET, 1日2mg投与) と比較検討し次のごとき結果を得た. (1).CMA投与群雄AGDは対照に比し短縮即ち女性化 (fcminization) を示した.NET群では雌AGDの伸長即ち男性化 (masculinization) が認められた.この変化は胚仔発育とは特に関係なく肛門一外性器部位に独立した変化である. (2) CMAによりfeminizationを生じた雄ラットAGDは短縮したまま生長を続け, 離乳時でも出生時の対照との差がそのまま出現した.これに対しNETにより生じた雌ラットAGDの伸長は生後10日で正常に回復した. (3).外性器発育を指標とした性成熟過程は, CMA群, NET群共に雄ラットの性成熟が対照に比し遅延傾向を示した.雌ラットの性成熟は両群共対照と差が認められなかつた.なお外性器の形態異常は雌雄ラット共にみられなかつた. (4) Sister-brothermatingにより交尾能を検討したところ, CMA群の雌雄ラット及びNET群の雌ラットの交尾率は対照に比し著明に低下していた.このことは胎生期に受けたsteroidの影響が生後の性機能に出現する可能性を示すものであり, その作用機序と共に今後の検討を要する問題と考える.

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