日本内分泌学会雑誌
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甲状腺機能亢進症における筋肉量の減少, 体重補正上腕囲を指標としての観察
百渓 尚子
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1970 年 46 巻 2 号 p. 207-217,120

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抄録

甲状腺機能亢進症では筋肉量の減少があるのではないかと考え, 体重補正上腕囲 (体重増減度を0としたときの上腕囲) を筋肉量の指標として用いて本研究をおこなつた.対象は甲状腺機能亢進症患者男109例, 女292例で, 各々の患者と身長, 体重, 年令のほぼ見合う健常者男109例, 女292例と体重補正上腕囲の比較をおこなつた.また治療により機能の正常化を認めた時, その後3~4ケ月経た時の体重補正上腕囲を, 治療前, 健常者などと比較した.亢進症男子の治療前の体重補正上腕囲の平均は25.4cm, 女子25.4cmで, 健常男子26.7cm, 女子26.0cmと比べ男女とも亢進症患者が有意に小さく (p<0.001), 機能の正常化を認みた時点でもなお健常者より小さく, その後3~4ヵ月を経て初めて健常者との差がほとんどなくなつた.以上のことから「甲状腺機能亢進症患者では筋肉量の減少があり, その回復は甲状腺機能の回復よりおくれる」という結論が得られた.

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© 一般社団法人 日本内分泌学会
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