沿岸海洋研究
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微細藻類の生活史に関わる再懸濁作用 -冠水および再懸濁が干潟微細藻類の増殖に与える効果-
一見 和彦山本 昭憲多田 邦尚
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2013 年 51 巻 1 号 p. 29-34

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抄録

干潟域は干満周期により堆積物の干出と水没が繰り返されており,これに伴って表層堆積物の再懸濁が頻繁に生じている.潮間帯で繰り返されるこのような作用は,浅場に生息する一次生産者の増殖過程に何らかの影響を与えていると考えられる.本研究では,干潟域に生息する微細藻類の増殖が,干出と冠水にどう応答し,また冠水時に生じる再懸濁作用がその増殖にどう影響しているのか,現場観測と室内実験系により検証を行った.その結果,堆積物表層のChl a 濃度は干出条件ではほとんど増加が認められず,冠水条件で大きな増加が観察された.PAM 蛍光光度計を用いた試験においても,光合成活性を示す⊿ F/F m’値は干出条件で時間経過と共に低下した.室内培養試験においても,付着珪藻,浮遊性珪藻共に干出条件では大きな増殖は認められず,冠水およびその攪拌条件下で大きく増殖した.これらの結果は,干潟域に生息する微細藻類にとって,潮汐に伴う海水の流入と,同時に生じる再懸濁作用がこれらの増殖に大きく影響していることを示している.

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© 2013 日本海洋学会 沿岸海洋研究会
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