抄録
近年,西日本を中心に有害有毒プランクトンによる赤潮が水産業および沿岸環境にとって大きな問題となっている.本
稿では,衛星リモートセンシングを利用した赤潮監視として,瀬戸内海西部・豊後水道海域におけるKarenia mikimotoi
赤潮および日本海西部海域におけるCochlodinium polykrikoides 赤潮という2つの事例を報告する.豊後水道北西部に出現するK. mikimotoi 赤潮の初期発生海域は周防灘南部海域であり,数週間かけて伊予灘,別府湾,豊後水道と分布域を拡げ,広域赤潮に発達する.一方,日本海西部海域におけるC. polykrikoides 赤潮の初期増殖海域は韓国南部沿岸域であり,対馬暖流によって2週間から1ヶ月程度で山陰沿岸域や隠岐諸島まで赤潮水塊が輸送される.両海域では,これらの赤潮発生シナリオを基に,衛星リモートセンシングと現場調査を併用したモニタリング体制を構築し,関係機関が連携して赤潮監視を実施しており,漁業被害の軽減に貢献している.