沿岸海洋研究
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岩手県船越半島沖に集積した瓦礫における底生生物の分布
土田 真二藤原 義弘高橋 幸愛ソーントン ブレア河戸 勝屋良 由美子山北 剛久藤倉 克則北里 洋
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2017 年 54 巻 2 号 p. 129-133

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抄録

2013年10月7日,岩手県船越半島沖水深540m 地点において,無人探査機「ハイパードルフィン」による潜航調査を行ったところ,5箇所で集積した瓦礫を発見した.その場所は,発達した海底谷の入り口にあたり,瓦礫は互いに絡まった状態で塊となってパッチ状に分布していた.瓦礫は,缶類,プラスティック類,木片類,漁具類,その他に大別され,そこには,カイメン類,イソギンチャク類,クモヒトデ類,ウミシダ類,ヒトデ類,魚類が付着または近傍に生息していた. 瓦礫種別に付着していた生物の個体数密度は,プラスティック類でもっとも小さく66.5個体m-2,次いで缶類,木片類と漁具類ははるかに大きく240個体m-2前後であった.天然の付着基質となる露頭および岩石は,木片類や漁具類より小さく141.8個体m-2であった.各種瓦礫上に生息した生物の組成比率をみると,いずれもクモヒトデ類が優占し,缶類およびプラスティック類で100%,木片類と漁具類で97%であった.これら瓦礫上で優占していたクモヒトデ類の個体数密度を,瓦礫上と瓦礫から3~5m 地点および10m 地点の泥底と比較した.その結果,それぞれ129.6個体m-2,5.8個体m-2,6.6個体m-2となり,瓦礫上の密度は瓦礫から3~5m および10m 地点の約20倍となった.これらから,瓦礫上の生物密度は,瓦礫から離れた泥底よりも高くなること,木片類や漁具類では,露頭および岩石よりも高い密度になることが明らかになった.

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© 2017 日本海洋学会 沿岸海洋研究会
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