日本生態学会大会講演要旨集
第51回日本生態学会大会 釧路大会
セッションID: P1-082c
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冬・水・田んぼにおけるカモ類排泄物の肥料的価値
*中村 雅子香川 裕之江成 敬次郎
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キーワード: 水田, カモ類, 排泄物, 肥料, 湛水
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抄録
最近、冬の田んぼに意図的に浅く水を張る冬・水・田んぼという農法が日本各地で行われている。冬・水・田んぼは春の抑草効果、その結果の減農薬、冬鳥のカモ類の利用がある場所では冬鳥の生息地の保全、またカモ類が利用した際に落ちた排泄物の施肥効果が期待されるなど、生き物と共存する環境保全型農業として注目されている。しかし、冬・水・田んぼに関する調査は始まったばかりでデータの蓄積が急務である。そこで、冬・水・田んぼを行った際のカモ類排泄物の施肥効果について仙台市内の田んぼで調査を行った。
カモ類排泄物の施肥効果を検証するために冬・水・田んぼの土壌養分(N・P・K、ケイ酸、炭素)の経日変化を追い、湛水開始時と田植え直前で養分量を比較した。また、冬・水・田んぼは秋耕せずに冬に水に張るため、対照区として慣行区(秋耕あり・湛水なし)、不耕起区(秋耕なし・湛水なし)を設け、さらにカモ類の利用がない湛水防鳥区(秋耕なし・湛水あり)を設け、計4調査区の土壌養分の経日変化を追った。
結果、Nに関しては全ての調査区で調査開始前と開始後で土壌中のNは減少を示し、P・Kは全ての調査区で増加し、ケイ酸については土壌の表層で全調査区において増加傾向を示した。また炭素に関してはほとんど変化が見られなかった。測定項目の増加・減少の幅に調査区間での大差はなかった。つまり、P・K・ケイ酸について、冬・水・田んぼ区で土壌養分の増加が見られたが、対照区においても同様に増加が見られたため、今回の調査結果からは冬・水・田んぼにおけるカモ類排泄物の施肥効果は認められなかった。ただし今回の調査では、湛水が上手く保持できなかったこと、冬・水・田んぼ初年度だったこと、カモ類が採食場として利用していたことなどがあり、今後、ハクチョウがネグラとして利用している田んぼや何年も冬・水・田んぼを行っている田んぼなどでの調査を行い、どのような鳥の利用があれば施肥効果になるのかを検討する必要がある。
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© 2004 日本生態学会
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