日本生態学会大会講演要旨集
第51回日本生態学会大会 釧路大会
セッションID: P1-099
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ヒメシャガにおける花被片間の機能的分化
*森長 真一酒井 聡樹
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抄録
 花弁や花被片などの誘引器官の多様性は、それぞれの植物が効率的な送受粉のために進化させてきた結果である。このような花弁(花被片)の多様性と進化を理解するためには、それぞれの花弁(花被片)に対する選択圧を検出する必要があると考えられる。
 本研究では、大きさと形の異なる花被片(外花被片と内花被片)をもつヒメシャガ(アヤメ科)を材料に、花被片間の機能分化と各花被片に対する選択圧の違いを明らかにすることを目的とした。そこで2003年仙台市青葉山のヒメシャガ集団において、個体ごとに各花被片の長さを人為的に処理して、送粉者の訪花頻度と送受粉数/訪花、そして最終的な雌雄繁殖成功の指標として送粉数/花(雄繁殖成功)と種子数/花(雌繁殖成功)を調査した。
 その結果、外花被片と内花被片間には雌雄機能への貢献度と選択圧に違いがあった。外花被片は雌雄機能に貢献しており、現在の長さが適応的であった。一方、内花被片は雄機能のみに貢献しており、ある程度短くしても送粉数が減少しないため、現在よりも短い長さが適応的であった。また内花被片が適応的な長さに進化しなかったのは、外花被片と内花被片間の遺伝相関などの制約によるものかもしれない。花弁(花被片)にみられる多様性は、各花弁(花被片)に対する選択圧の違いとその間の制約により進化してきたと考えられる。
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© 2004 日本生態学会
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