日本生態学会大会講演要旨集
第51回日本生態学会大会 釧路大会
セッションID: P1-107
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アオダモ局所個体群の性比と種子の性質
*半田 孝俊
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抄録

2002年は北海道内では各地でアオダモが同調して豊作年となったように観察され,林木育種センター北海道育種場構内(北海道江別市文教台緑町)でもサイズが極端に小さい個体を除いてほぼ全個体が開花した。調査地は大きな沢と平坦地の針葉樹人工林に挟まれた帯状の斜面で,花粉の交流は流域毎に行われているのが大部分と想定されたので,小さな流域毎にAからHの9局所個体群に分けて行った。雌雄の調査は5月に、秋に配置図により,雌孤立個体,雌雄隣接個体,林縁個体,樹冠下個体など環境を考慮して21個体から枝を切り落として果実を採取し、25粒を抽出し,軟X線装置を使用して種子の内部形質を調べた。
結果:雄123,雌196株が確認できた。雌の平均胸高直径は11.9cm,樹高8.2m,雄の平均胸高直径12.2cm,樹高8.1mであり,分散分析の結果では差がなかったが,頻度分布図では雄の胸高直径のピークが雌より3cm大きいところにあった。性比が1:1と仮定した場合のカイ二乗検定結果では,集団全体とE,F局所個体群が棄却され,雄の比率が雌より多いことが確かめられた。調査個体数が少ないH,I以外について検討すると,A,B,C,Gは雄が多く,Dだけが雌が多かったが,いずれも有意ではなかった。個体サイズはB,C,Dがほかよりも小さかった。またFでは雌サイズの平均が雄サイズよりも小さがったが統計的には有意でなかった。種子の充実率は76から100%で、調査地ではサイズの小さい個体を除いて全ての個体が同調して開花したことにより,雄雌個体が隣接していなくても,孤立していても周囲から花粉が飛散,もしくは訪花昆虫により交流は広範囲におこなわれていると予想された。また種子に幼虫の入っていたもの、穴があき幼根部分が被害を受けているものも観察された。

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© 2004 日本生態学会
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