日本生態学会大会講演要旨集
第51回日本生態学会大会 釧路大会
セッションID: P1-146c
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ウルシ属2種(ヌルデ、ヤマウルシ)における栄養成長・繁殖成長の季節的パターンと経年的繁殖行動との関わり
*松山 周平嵜元 道徳
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抄録
森林性樹木における繁殖コストの補償メカニズムを解明する一環として、雌雄異種性樹木で、シュート上の花序形成位置と花序形成時期の異なるヌルデとヤマウルシを対象に、当年生シュート(モジュール)の形態、モジュールレベルでの栄養・繁殖成長投資パターン、開花・結果過程、個体レベルの直径成長量、そして経年的な繁殖行動を調べた。
当年生シュートの長さと重さは2種ともに有意な雌雄差が認められなかった。モジュール当たりの葉重、葉数、葉面積には2種間で違いが認められ、ヌルデにおいて雌の方がそれぞれ有意に大きくなっていた。花期は2種間で異なるが、ヤマウルシが開葉とほぼ同時期の春季であり、ヌルデが開葉終了後の夏季である。花期における花序重は、2種ともに雄の方が有意に大きくなっていた。花序当たり花数は2種ともに雄の方が有意に大きくなっていた。個花の重さは、ヌルデでは有意な雌雄差が認められなかったのに対して、ヤマウルシでは雄の方が有意に大きくなっていた。モジュール当たりの花序数は、頂生で1本の花序を形成するヌルデでは雌雄差がなく、腋生のヤマウルシでは雄の方が有意に大きくなっていた。結果率は、ヌルデが0.38、ヤマウルシが0.32であった。またモジュールレベルにおける葉、シュート、繁殖器官への投資割合は、ヌルデで有意な雌雄間差がなかったのに対して、ヤマウルシでは繁殖器官への投資割合は雌の方が有意に大きくなっていた。一方、個体当たりの花序形成枝率(花序形成枝数/枝数)の経年変化は、ヌルデでは小さくなっていたものの、ヤマウルシでは大きくしかも有意な雌雄差が認められる年もあった。また胸高直径測定による個体レベルの栄養成長率はヌルデ、ヤマウルシともに雌雄差が認められなかった。
講演では、これらの結果をもとに、花序形成の位置と時期の違いが繁殖コストの補償レベルの違いをもたらす要因になる可能性とそのメカニズムについて考察する。
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© 2004 日本生態学会
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