日本生態学会大会講演要旨集
第51回日本生態学会大会 釧路大会
セッションID: P1-150c
会議情報
フキにおける三つの花型の適応的意義:訪花昆虫の誘引に貢献しているか?
*鈴木 由佳星崎 和彦小林 一三酒井 聡樹
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
 フキは雌雄異株植物であるとされている。メス花序は、多数のメス小花(雌しべ稔性有り・花粉なし)と少数の両性小花(雌しべ不稔・花粉無し)を持つとされ、オス花序は、両性小花(雌しべ不稔・花粉有り)のみを持つとされている。最近これに加えて、両性小花(雌しべ不稔・花粉有り)とメス小花(雌しべ稔性有り・花粉なし)を持つ花序(「オスメス花序」と呼ぶ)も低頻度で出現することがわかってきた。フキにおいて、この3つの花型はなぜ維持されてきたのだろうか。
 そこで本研究では、メス花序・オス花序・オスメス花序の3つの花型の花序・頭花・小花それぞれの形態を比較した。また、それぞれの花型への昆虫の花序訪問回数を調べた。その際、メス花序への訪花昆虫の誘引に役立っているとされている両性小花を除去した時、昆虫の花序訪問回数に影響するのかどうかも調べた。
 その結果、オスメス花序とオス花序の形態がきわめて近いことがわかった。昆虫の訪花が十分に見られた時の花序訪問回数は、オスメス花序とオス花序はほぼ同じで、どちらもメス花序より有意に高かった。両性小花を除去したメス花序と無処理のメス花序の花序訪問回数は変わらなかった。
 これらのことからオスメス花序は、形態においても訪花昆虫の誘引においても、オス花序により近いといえるだろう。メス花序は、オスメス花序やオス花序と比べて訪花昆虫を有効に誘引していないのではないかと考えられる。今後は、3つの花型の雄繁殖成功や雌繁殖成功を調べ、それぞれの花型が共存する条件を探る必要があるだろう。
著者関連情報
© 2004 日本生態学会
前の記事 次の記事
feedback
Top