京都府北部にある冷温帯林の下層に優占的で地上部形態の異なる低木3種(クロモジ、タンナサワフタギ、ツリガネツツジ)を対象に、斜面地形上での空間分布構造(水平分布、種内・種間分布相関)と関与要因を解析した。
L関数による分布解析から、3種(地上幹長>50cm)はいずれも0-20mの距離スケールで集中分布を示した。またL関数による種間の分布相関解析から、クロモジとタンナサワフタギは有意な正の相関を示した。一方、幹長をもとにした各サイズ階(50-150、150-250、250-350、350- cm)の分布は、中間サイズ階でランダム分布を示す種もあったものの、3種は概して最大・最小の各サイズ階では有意な集中分布を示した。またサイズ階間の種内分布相関解析では、タンナサワフタギが殆どのサイズ階間でほぼ独立的な関係を示し、ツリガネツツジは各サイズ階間で有意な正の相関関係を示した。クロモジは隣接サイズ階間で正の相関を示す一方で、小サイズ階と大サイズ階の間では独立的な関係を示した。次に、環境要因としてrPPFD、斜面傾斜角、土壌含水率を取り上げ、単位面積当たりに存在する株数、株当たり地上幹数、主幹の長さと傾斜角を目的変数とする重回帰分析を行った。単位面積当たりに存在する株数は3種ともに斜面傾斜角に有意な負の影響を受けていた。また株当たりの平均地上幹数は、クロモジとタンナサワフタギが斜面傾斜角から有意な正の影響を受けていたが、著しい多幹型のツリガネツツジは何ら有意な影響を受けていなかった。主幹長は、クロモジがrPPFDに正の、タンナサワフタギが斜面傾斜角に負の、それぞれ有意な影響を受けていた。主幹の傾斜角は3種ともに斜面傾斜角に有意な正の影響を受けていた。
講演では以上の結果をもとに、低木種が萌芽性という特徴を有していること、調査地が日本海側の多雪地帯にあることなどを踏まえ考察する。