日本生態学会大会講演要旨集
第51回日本生態学会大会 釧路大会
セッションID: P3-039c
会議情報
カンアオイ属4種の送粉様式
*藤田 淳一藤山 静雄
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

ウマノスズクサ科(Aristlochiaceae)のカンアオイ属(Asarum)の送粉様式の解明するために、ミヤマアオイA. fauriei var.nakaii・ヒメカンアオイA. takaoi・ウスバサイシンA. sieboldii・フタバアオイA. caulescenseの4種に関して研究を進めている。まず、訪花者がどのような動物であるのかを野外観察で調べた。調査したカンアオイ4種では、いずれもトビムシ・ヤスデなどの土壌動物の訪花が記録された。次に訪花者が送粉に関与する可能性を検討するために、蕾のうちに袋掛けをして動物が訪花できない条件と、対照区との比較を行った。ミヤマアオイ・ヒメカンアオイの2種は対照区では結実したが、袋掛けをすると殆ど結実しなかった。これに対し、ウスバサイシン、フタバアオイの2種は袋を掛けた区でも高い結果率を示した。このことは、ミヤマアオイ・ヒメカンアオイは送粉を訪花者に依存し、ウスバサイシン・フタバアオイはself pollinationを行っている可能性が高い。さらに、ミヤマアオイ・ウスバサイシン・フタバアオイの3種に関して、花を中に入れたトラップを設置し、花が訪花者を匂いによって誘引しているのか否かを調査した。花を中に入れない対照区との比較から、ミヤマアオイはトビムシ・アリ・双翅目を誘引し、ウスバサイシン・フタバアオイは動物を誘引しないことが示唆された。ヒメカンアオイではトラップ実験を行っていないが、訪花者の訪花頻度のデータから、花が訪花者のトビムシを誘引している観察データを得ている。これらの袋掛け実験とトラップ実験から、ミヤマアオイ・ヒメカンアオイは動物を匂いで誘引する送粉繁殖様式をとり、ウスバサイシン・フタバアオイは、self pollinationをしており、動物を誘引していないと考えられた。

著者関連情報
© 2004 日本生態学会
前の記事 次の記事
feedback
Top