日本生態学会大会講演要旨集
第51回日本生態学会大会 釧路大会
セッションID: P3-041c
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ツクバネウツギの結実率にクマバチの盗蜜は影響を及ぼすのか?
*増井 直緒香川 暁子遠藤 知二
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抄録

九州から本州にかけて分布するキムネクマバチは、地域によっては訪花性ハナバチ群集全体の約2割の個体数を占めており、とくに木本植物にとっては重要な訪花者となっている。しかし、クマバチ類は花粉を運ばず、蜜だけを吸い取る盗蜜行動をすることでもよく知られている。この盗蜜行動が同じ花を訪れる他の昆虫の訪花頻度やその植物の結実率にどのような影響を及ぼしているかについてはほとんど調べられていない。そこでキムネクマバチによって高頻度で盗蜜を受けるツクバネウツギの花を用いて、盗蜜行動が他の昆虫の訪花頻度を低下させているかどうか、さらに結実率を低下させているかどうかを明らかにするため、野外実験を行った。実験では、ツクバネウツギの開花期(4_-_5月)に、花のついた枝を単位として1)盗蜜防止区、2)袋がけ区の2つの操作区と、何も操作しない3)対照区の3つの処理区を設け、盗蜜防止区と対照区でクマバチと他の訪花性昆虫の訪花頻度を観察した。また、ツクバネウツギの結実期に各処理区の総花数、結実率を調べた。その結果、クマバチの訪花頻度は盗蜜防止区と対照区の間であまり変わらなかったものの、他の訪花性昆虫は有意に高頻度で盗蜜防止区を訪れた。一方、2003年度のツクバネウツギの結実率は盗蜜防止区が平均22.0(SD16.5)%、袋がけ区が10.5(7.8)%、対照区が33.8(21.9)%となり、むしろクマバチの盗蜜が可能だった対照区で高い結実率を示したが、統計的には有意ではなかった。したがって、クマバチの盗蜜行動が他の昆虫の訪花頻度を低下させている可能性はあるが、ツクバネウツギの結実率を低下させているという証拠は得られなかった。なぜこのような結果が生じたのかについて考察する。

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© 2004 日本生態学会
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