日本生態学会大会講演要旨集
第51回日本生態学会大会 釧路大会
セッションID: P3-098
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カタクリの潜在生育地の推定 _-_地域の生態系保全へのGISの活用_-_
*増澤 直小泉 武栄三橋 弘宗井本 郁子北川 淑子辻村 千尋逸見 一郎松林 健一吉田 直隆
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抄録
野生生物の潜在的な生育生息地の評価とは、各生物の分布情報と物理環境条件を用いて、生息に適した条件を抽出することである。抽出に用いる環境条件は、地形や標高、植生、気象条件など生物の分布に大きな影響を及ぼすことが推測される要因である。野生生物の中には、人為的な土地改変によって本来の生育生息場所の多くが消失した種もあり、現状の分布調査を行なうだけでは生態系の評価や保全計画を立案することが困難な場合がある。そのため、地域の生態系や生物多様性を象徴する野生生物の潜在的な生育生息地を推定し、地図化(ポテンシャルハビタットマップの作成)することにより、事業の実施による効果の客観化、定量化が可能となり、例えば、環境アセスメントのスコーピング段階から生物の保全上配慮すべき地域を抽出したり、自然公園事業や自然再生事業における適地選定などに活用することができる。

 今回は、関東山地南部に分布するカタクリを題材にポテンシャルハビタットマップの作成を行った。カタクリは里山の代表的な春植物であり、氷期の遺存種ともいえるが、関東地方南部では生育地が激減し、それらの生育環境の保全管理が重要な課題となっている。

およそ20年前のカタクリ分布地点に関する詳細データ(故鈴木由告氏調査)をもとに収集したカタクリの分布地点情報や、地形図、、DEM、植生図などをGISに入力し、それらの情報をもとにカタクリの生育環境条件(斜面方位、傾斜、微地形、植生など)を整理解析を行った。その結果、カタクリの分布は北向き斜面、緩傾斜地、沖積錐、林床管理の行き届いた落葉広葉樹二次林といった条件の整った場所に偏在することが分かった。それらの生育環境条件から導き出される閾地をもとに、GISによる広域的なカタクリのポテンシャルハビタットマップを作成し、その利活用方法について検討した。
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© 2004 日本生態学会
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