日本生態学会大会講演要旨集
第51回日本生態学会大会 釧路大会
セッションID: P3-138
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オオジシギの渡りに関する報告
*浦 達也葉山 政治東 正剛
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抄録

2001年7月13日から8月19日、2003年7月4日から9月11日に北海道苫小牧勇払の弁天沼において、日本野鳥の会における勇払プロジェクトの一環でオオジシギの標識調査を行ったのでそこから分かったことについて報告する。弁天沼は鳥類における道内でも有力な渡りの中継地として考えられている。捕獲はカスミ網により、雨の日以外はなるべく標識調査を行った。まず渡りのピークについてであるが、調査期間内において2001年は8月18日頃、2003年は8月19日頃が最も捕獲個体数が多かった。短期間でオオジシギの標識調査を行うならお盆の頃が最も効率がよい。以前演者らはオオジシギについて幼鳥、成鳥とも雌で嘴が長いということを示した。シギ類などの水禽は嘴峰長が体サイズの指標として用いられ、オオジシギの嘴峰長の雌雄差は雌で体サイズが大きいということを表していると考えられる。しかし地中に嘴を差し込み採餌する鳥の嘴峰長に注目して考えると、この雌雄差は採餌場所において嘴を差し込む深度によって雌雄で餌の競合を避ける、逆に嘴峰長が雌雄で同じ場合は時期の差によって餌の競合を避けるという戦略も考えられる、との議論がある。そこで捕獲個体について性別を確かめ、性比に時期毎(1ヶ月を10日毎に分けた)で差があるか検討したが、2001年、2003年とも渡りの性比で時期による差がなかった。また日別にみても日によって捕獲個体が雄のみ、雌のみということもなかった。このことから嘴峰長によって雌雄で採餌の競合を避けるという考えを棄却できない。次に、通過個体らの体サイズが日や時期を追うごとに増加するなどの変化があるか調べたが、2001年、2003年ともで雌雄どちらも変化がなかった。このことからオオジシギはある一定の体重や体サイズで弁天沼を通過しているものと考えられる。今後はボディーコンディション分析や本州の中継地などで同様のことを調べると通過個体の体サイズ等についてさらに詳しく分かるだろう。

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© 2004 日本生態学会
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