日本生態学会大会講演要旨集
第51回日本生態学会大会 釧路大会
セッションID: O1-V08
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北海道内の湿原における, ミズゴケの成長量とハンモックの形状の地域差
*矢崎 友嗣矢部 和夫植村 滋
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抄録

はじめに
北海道のミズゴケハンモックの形状には地域差がみられ, 日本海側で低く扁平, 太平洋側西部で中程度で山型, 太平洋側東部で高く円筒形である(Yabe and Uemura, 2001). 著者らは, ハンモックの高さ異なる4湿原においてミズゴケの成長量, ハンモックの標高, 水文化学環境の季節変化などを測定し, ハンモックの形状に地域差が生じる過程を検討した.


方法
観測地はサロベツ・歌才(日本海側), ウトナイ(太平洋側西部), 風蓮川(太平洋側東部)の4湿原である. 4月から10月まで約1ヶ月間隔でハンモックを形成するミズゴケの伸長成長量(以下, 成長量), ハンモックの標高などを測定した. 雪圧と他の植物による被陰の効果を検討するため, 無処理区, 雪圧除去区, 他の植物刈り込み区, 雪圧除去×刈り込み区を設置した.


結果と考察
ミズゴケの成長量の地域差
同種でミズゴケの成長量を比べると, 北海道西部または日本海側で東部を上回る傾向がみられた. これは, 2002年と同様の傾向であった(2003年度大会にて発表済み).

被陰の影響
ほとんどのハンモックで他の植物の刈り込みによって乾燥または枯死するミズゴケの割合が増加し, 成長量も低下した. また, 刈り込み区では夏季に標高が低下した. 刈り込みによって被陰による蒸発散抑制効果が失われ, ミズゴケが乾燥し, ハンモックを構成する泥炭が収縮していたと考えられる.

雪圧の効果
太平洋側では雪圧による標高はほとんど変化しなかったが, 日本海側では雪圧によってハンモックの標高が低下していた. 歌才では無処理区で標高が大きく低下したが, 翌年の成長量も大きく, 2003年秋には2002年の秋と同程度の標高になった. このことから, 歌才では積雪がハンモックの標高を地下水面に近づけ, その結果ミズゴケの生育に良好な湿潤環境が形成されたことが推察された.

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© 2004 日本生態学会
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