日本生態学会大会講演要旨集
第51回日本生態学会大会 釧路大会
セッションID: O1-Z23
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水生植物ヒルムシロ属における環境ストレス応答
*飯田 聡子小菅 桂子角野 康郎
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抄録
 水生植物ヒルムシロ属は,世界に100種あまり,日本に19種が報告されている.この群の生活圏は広く,高山の池沼から海沿いの汽水域まで,幅広い水環境に多様化している.これまでの葉緑体DNA上スペーサー領域を用いた日本産ヒルムシロ属の分子系統解析により,本属のヒロハノエビモとササバモは極めて近縁であることが明らかになった.ヒロハノエビモは淡水域と汽水域に生育できるのに対し,ササバモはおもに淡水域での生育に限られている.また2種は生育型可塑性においても大きく異なり,ヒロハノエビモは完全な沈水生活をし,沈水葉を形成するが,ササバモは生育型可塑性を示し沈水葉と浮葉を形成し,渇水時には陸生葉を形成して陸上で生存できる.植物に対するストレスの大きさは,淡水環境と汽水環境,あるいは水中環境と気中環境では異なることから,ヒロハノエビモとササバモは各々の生育環境に対応してストレス耐性を多様化させていることが予想される.すなわち汽水域に生育するヒロハノエビモは塩ストレス耐性を有するが,ササバモは耐性をもたないこと,逆に生育型可塑性を示し夏の高温にさらされるササバモは高温ストレス耐性を有するが,ヒロハノエビモは耐性をもたない可能性がある.そこで,この可能性を検討するため,本研究ではヒロハノエビモとササバモに塩ストレスや高温ストレスを与え,その時のタンパク質発現,成長生理を種間で比較する.また表現型の変化を並行して調べ,ストレス応答と生育型可塑性との関連について検討を行う.
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© 2004 日本生態学会
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