日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: B110
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オニグルミにおける花粉流動パターンの2年間の比較
*木村 恵陶山 佳久清和 研二Woeste Keith
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抄録

オニグルミは風媒の雌雄異花同株植物で、同一個体群内に雌性先熟・雄性先熟個体を持つヘテロダイコガミーである。これまでの研究によって、花粉流動には開花フェノロジーが強く影響を及ぼすことがわかっている。開花開始時期は気温に左右されるため、開花フェノロジーは年によって異なり、その違いが個体間の送粉距離や送粉量の違いとして表れると予測される。本研究では同一個体群で2年間の花粉流動パターンを調べ、開花フェノロジーが花粉流動に及ぼす影響を調べた。宮城県鬼首に200×300mの調査区を設置し、その中で雄花を開花させたオニグルミ76個体を花粉親候補とした。2001年に調査区内の中心部に生育する21母樹から計670種子を採取し、マイクロサテライト分析による父性解析を行った。使用した5遺伝子座の平均対立遺伝子数は15.8、父性排斥率は0.999と高い値を示した。父性解析の結果、解析した種子の65.4%の花粉親が特定された。そのうち、開花フェノロジーから期待される2つの開花タイプ間の相補的な交配によって生産された種子は88.3%であり、2000年の97.8%と同様に高い値を示した。また送粉距離の平均値は24.3m、全体の36.1%は20m未満であり、前年同様に近距離の花粉流動が多くみられた。一方、母樹ごとにみると花粉親数の増減など年度間で異なる花粉流動パターンがみられた。また、2000年にはみられなかった自殖種子が3母樹6種子で確認された。2001年の開花期間は前年に比べ10日ほど長かったことから、このようなフェノロジーの違いが母樹ごとの花粉流動パターンに影響したと考えられる。

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© 2005 日本生態学会
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