日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: D107
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北海道東部地域におけるエゾシカ狩猟残滓の分布状況と野生動物による利用
*南山 依里佐藤 喜和
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抄録

1990年代以降、北海道東部ではエゾシ(Cervus nippon yesoensis)の個体数が爆発的に増加した。エゾシカの個体数増加は農林業被害や林床植生への影響という点で大きな社会問題となってきたが、その対策として行なわれてきた狩猟や駆除による個体数調整で発生する残滓も、野生動物がそれを採食することで問題となっている。大型ワシ類の鉛中毒症がはその顕著な例である。野生動物への影響を軽減するため、北海道は2000年秋からエゾシカ猟での鉛弾の使用を禁止し、釧路支庁は4つの町で狩猟残滓回収ボックスを設置した。また環境省は2003年4月から狩猟残滓の放置を禁止した。今後も野生動物への影響を軽減する対策を立てるうえで、実際に山林に捨てられている狩猟残滓の現状を知る必要がある。そこで2002年から3年間、融雪時期に、道東の浦幌町、音別町、白糠町の河川沿いにおいて、ベルトトランセクト法により、シカ死体の数、死因、動物による利用などについて調べた。その結果、182体の死体を発見した。このうち130体が狩猟残滓であり、自然死死体数の5.7倍になった。また110体で哺乳類・鳥類による利用が確認された。年間狩猟数が2,000_から_4,000頭の白糠町では残滓数が7.7_から_12体/kmであり、狩猟数が1,000頭未満の音別町、浦幌町では残滓数が3体以下/kmであった。狩猟数の多い地域の方が、狩猟数の少ない地域より残滓が多かった。以上の結果から自然状態よりかなり多い数のシカ死体が、野生動物への人工的な餌として供給されていることがわかった。本調査は,浦幌ヒグマ調査会が受けた北海道委託「野生動物による残滓利用状況調査」の一部であり、浦幌ヒグマ調査会および北大ヒグマ研究グループの協同調査として行なった。

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© 2005 日本生態学会
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